人権政策基本法案の意見募集を開始、企業の人権尊重の責任に関する指針を策定へ

(韓国)

ソウル発

2021年07月29日

韓国法務部は、人権政策の統合的および総合的な推進を図るため、人権政策基本法案の意見募集を開始した。韓国政府は2007年に国家人権基本計画を策定したが、法律上の根拠が不十分だったとして、国際人権条約および国連人権理事会に提出する報告書の作成、審議、勧告の履行に関する手続きを明確化し、勧告履行のための国の責務を定めることで、先進的な人権政策の策定・履行を図ることを目的としている。

同法案の主な内容は以下のとおりで、意見募集は8月9日まで行われる。全文は国民参加立法センターのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから入手が可能。

1.国家人権政策の推進体制

行政各部の政策審議・調整を推進するため、法務部傘下に国家人権政策員会を設置。人権政策の策定・実施を効率的に行うための制度を構築するとともに、国家人権委員会との協力を規定する。

2.国家人権政策基本計画の策定と実施

総合的かつ体系的な人権政策の推進に向け、5年単位の国家人権政策基本計画の策定および評価の手続きと、年単位の実施計画および地域人権政策計画を策定する。

3.国家報告書および国際人権機関の勧告(注)

国家報告書の作成・提出および審議における手続き、国際人権機構による勧告の国内政策への反映のための基本的事項を規定。

4.企業と人権

企業活動の影響力の拡大を受け、企業の人権尊重を重視する国際社会の潮流を反映するため、国の人権保護義務と企業の人権尊重の責任を規定。

(1)国と地方自治体は、企業による人権侵害の防止に向けた法制度を定める責務を有し、企業による人権侵害の被害者に対する救済手続きの提供・支援を行わなければならない。

(2)企業活動を行う際、国内外で他人の人権を侵害、また、第三者による人権侵害に関与してはならず、人権侵害の被害者に対する適切な救済手段を講じるよう努めなければならない。

(3)政府は、企業の人権尊重の責任に関する指針、情報公開の標準を定め、評価基準をおよび評価指標を設定、運営するとともに、その過程で国家人権委員会へ意見および協力を求めることができる。

(注)韓国政府は、2021年6月時点で「市民的および政治的権利に関する国際規約」「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」「人権差別撤廃条約」「女性差別撤廃条約」「拷問等禁止条約」「児童の権利条約」「障がい者権利条約」を批准している。

(当間正明)

(韓国)

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