新型コロナ感染者急増で、今年の観光シーズンにも打撃

(チュニジア)

パリ発

2021年07月07日

チュニジアは2020年3月に新型コロナウイルスの感染第1波を乗り越えたが、2021年5月中旬以降の第3波の広がりに歯止めがかからない状況だ。6月の最終週の1日平均の新規感染者数は4,099人、死者数の合計は6月29日時点で1万4,959人に達し、世界保健機関(WHO)によると、アフリカ・アラブ地域で最多となっている。また、6月23日には初のインド由来のデルタ型変異株の症例も確認されている。

政府はこの状況に鑑み、7月1日から同11日まで一部地域でロックダウンを行い、これまでの午後10時から翌日午前5時までだった夜間外出禁止の開始時間を午後8時に前倒しするなどの新たな措置を発表した。

感染拡大が始まった2020年3月以降、経済的な打撃にあえぐチュニジアでは、特に主要産業の観光業が深刻な影響を受けている。チュニジア・ホテル業連盟(FTH)によると、観光産業の直接雇用者は10万人で、間接雇用者の28万9,000人を合わせると労働人口の11.4%、GDPでは13.8%(2018年末)を占める。FTHの行ったアンケートによると、2020年の売り上げが50%減と答えたホテル業者は80%以上に達し、FTHが行った2019年の統計で把握した820軒中135軒が廃業に追い込まれた。今回の感染者増大を受け、英国やベルギーはチュニジアを危険地域(レッド・ゾーン)に指定し、英国格安航空会社や大手旅行代理店は予約を全面的にキャンセルした。4月29日から欧州やロシアからのチャーター便が再開し、回復が見込まれた矢先だけに、夏の観光シーズンも回復を期待できない状況となった。

厚生省は7月4日、新型コロナウイルスワクチンの接種状況を発表した。接種キャンペーン開始の3月13日から7月3日までの1回目のワクチン接種者の合計は194万2,431人で、2回目の接種も終えた人数は57万4,505人。また、これまでに301万3,529人が全国ワクチン接種管理システム「EVAX.TN」を利用している。ワクチン接種のペースはワクチンの入荷増に伴って上がっている。2回の接種を終えたものの6月25日にコロナ感染が判明したヒシェーム・ムシーシー首相は、ワクチンを接種したために非常に軽い症状にとどまっているとして、ワクチンの積極的な接種を呼び掛けている。

(渡辺智子)

(チュニジア)

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