マクロン大統領、ワクチン接種を医療従事者に義務付け

(フランス)

パリ発

2021年07月14日

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は7月12日、新型コロナウイルスのデルタ型変異株の急速な感染拡大を受け、医療従事者へのワクチン接種の義務付けや衛生パスの適用拡大を軸にした新たな対応策を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

概要は以下のとおり。

  • 病院、診療所、高齢者施設、障害者施設の全ての看護・介護者、職員、また、高齢者や脆弱(ぜいじゃく)者(在宅者を含む)と接触する全ての業務従事者、ボランティアに対しワクチン接種を義務付ける。9月15日以降はワクチン未接種者には罰則を科す。
  • マルティニークおよびレユニオンで衛生緊急事態宣言を発動し、夜間外出禁止措置を導入する。
  • 本土においては感染拡大(新規感染者数が10万人当たり200人超、入院患者増加)に応じ、各県が個別にワクチン未接種者に対する制限措置など対応策を講ずる。
  • 水際措置について、今週から、感染リスクの高い国からの入国について、ワクチン未接種者の入国の際に隔離を求め、国境コントロールを強化する。
  • 7月21日から衛生パスの適用を50人以上が集まる娯楽・文化施設に拡大する。
  • 8月から衛生パスは、カフェ、レストラン、ショッピングセンター、病院、高齢者施設、社会医療施設、長距離の航空機・列車・車両による旅行者にも拡大される。
  • PCR検査よりもワクチン接種を推奨するために、秋以降は医師の処方箋に基づかないPCR検査は有料化する。

マクロン大統領は、今後の経済政策、構造改革についても見解を発表した。まず、必要な物資・サービス・技術の対外依存を緩和し、フランスおよび欧州の自立性を高めるため、9月にも新たな投資プランを策定し、デジタル、グリーン産業、バイオテクノロジー、農業分野で未来のチャンピオン企業を育てるとした。欧州政策については、フランスがEU理事会の議長国となる2022年上半期に、欧州の産業および技術独立性に関する共通アジェンダを作成する意向を示した。

大統領はまた、就労促進が経済復興の優先課題になるとし、失業保険制度改正を10月1日付で施行すると予告した。年金制度改革については「コロナ危機」が収束するまでは着手しないと言明した。若年者向けの就労支援については、就労に向け努力する義務を果たすことを条件にした支援金制度を9月以降に導入することを約束した。財源は増税ではなく、構造改革による歳出削減であることを強調した。

なお、マクロン大統領のテレビ演説終了後、ワクチン接種の予約が殺到し、予約サイトのドクトリブによれば、同12日午後8時以降延べ90万件の予約がされた。

(山崎あき)

(フランス)

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