首都圏の多くで最も厳しい行動制限の「強化された移動制限令」へ

(マレーシア)

クアラルンプール発

2021年07月02日

マレーシアのイスマイル・サブリ防衛相は7月1日、クアラルンプール市とセランゴール州の多くの地域で、新型コロナウイルス対策として国内で最も厳しい行動制限を局地的に課す措置「強化された移動制限令(Enhanced Movement Control Order:EMCO)」を7月3日から16日まで実施することを発表した。感染者数の減少傾向が見られないことから、感染者の約4割を占めて住民当たりの感染者数比率が高い同地域を対象とするという。

製造業は食品のみ操業可

EMCOの対象となる地域は、クアラルンプール市内が14カ所で、主に国営住宅が多く立地する地域が対象、セランゴール州の8地区34カ所でほぼ全域が対象となる。主な制限内容は以下のとおり。

  • 対象地域へのアクセスを封鎖。
  • 住民は生活必需品の買い出し目的に限り、自宅から半径10キロ圏内の外出が可能。外出人数は1世帯当たり1人。
  • 住民は、緊急事態や警察の許可がある場合以外の、午後8時以降のEMCO対象地域から出ることを禁止。
  • レストランと飲食店の営業は、テークアウトと宅配に限り、午前8時から午後8時まで。
  • 食料品店、コンビニ、薬局などの生活必需品を販売する小売店の営業は午前8時から午後8時まで。
  • 製造業は、食品と生活必需品(医薬品やマスクなど)の製造のみ操業可能。
  • 食料品店、食品製造を含むEMCOで、指定された必要不可欠なサービスと政府の公務に限り、雇用主の承認状または従業員証があれば勤務可能。必要不可欠なサービスの従業員は、以前に国際貿易産業省が発行した操業許可の携行が必要。
  • 空港、港湾は通常どおりの操業。公共交通機関の稼働率は50%以下。タクシーや配車サービスは、運転手を含めて乗車人数は2人まで。

今回の措置で、6月1日から発令している「国家回復計画」第1段階では、操業を許可されていた製造業の多くが操業停止となる。特に、セランゴール州は、製造業の一大集積地で、日系企業では、製造業765社のうち約4割を占める331社がセランゴール州に所在し、その多くを電気・電子、輸送機器、一般機械、化学品など、操業許可対象外となる製品が占める(注)。自社の操業停止のほか、自社が稼働していても調達先などが稼働せず生産が停止するなどの事例の増加が予想され、地場、外資にかかわらず多くの企業への影響が懸念される。

(注)日系企業数はジェトロ調べ(2020年2月時点)。

(田中麻理)

(マレーシア)

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