第1四半期の実質GDPは前年同期比3.6%減、サービス業の後退が響く

(メキシコ)

メキシコ発

2021年06月04日

メキシコ国立地理情報統計院(INEGI)は5月26日、2021年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率の産業別内訳を公表した。それに伴い、同期のGDP全体の成長率も改定され、前年同期比マイナス3.6%となった。4月末に発表された速報値より0.2ポイント上方修正された。

産業別内訳を詳しくみると、サービス産業が前年同期比4.0%減、寄与度はマイナス2.7ポイントで全体を最も大きく押し下げた(添付資料表1参照)。2020年12月以降に全国的に新型コロナウイルスの感染再拡大が始まり、2021年2月中旬までメキシコ市首都圏を含む主要各都市で新型コロナウイルス警戒信号が最高レベルの赤に移行したため、操業規制の強化や外出自粛により需要が減少したことが響いた。

サービス産業を個別業種別にみると、運輸・郵便・倉庫が寄与度マイナス0.8ポイント(GDPの増減:前年同期比12.7%減)と最も大きな景気押し下げ要因になった。ホテル・レストラン業もマイナス0.7ポイント(33.3%減)でそれに続いた。成長率ベースで後退が著しかったのは、映画館や遊園地を含む文化・娯楽施設で、前年同期比44.9%減だった。プラス成長したのは卸売業(4.4%増)、弁護士事務所等の専門サービス(1.5%増)のみだった。

製造業、鉱業、建設、電気・ガス・水道で構成される第二次産業(鉱工業)は、前年同期比2.7%減だった。新型コロナウイルス感染拡大以前から、投資減退や公共事業の縮小により不調だった建設業が6.8%減と最も後退した。製造業は警戒信号が赤の状況下であっても、ほとんどの州で必要不可欠な活動と認められ、大きな操業規制を受けることはなかったが、2021年2月に米国南部で発生した大寒波により天然ガスの供給が滞り、メキシコ北部の州を中心に電力不足が起こったことなどが影響し、0.6%減となった。製造業のうち、自動車を含む輸送機器製造は6.2%減で、世界的な半導体不足により、一部の自動車メーカーが生産停止を余儀なくされたことが影響したとみられる。

また、第1四半期のGDP成長率を前期比(季節調整済み)でみると、0.8%と3期連続でプラス成長を維持した。なお、速報値から0.4ポイント上方修正された(添付資料表2参照)。

中銀は2021年のGDP成長率見通しを6%に上方修正

メキシコ中央銀行は6月2日に発表した四半期レポートの中で、米国の大規模な財政支出を伴う景気刺激策により外需のさらなる回復が見込まれること、国内でのワクチン接種が大幅に前進していることで操業規制の緩和が期待されることなどから、2021年第2四半期以降、経済回復のペースが加速するとして、2021年のGDP成長率見通しを4.8%から6.0%へと引き上げた。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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