ベアリング大手NTN、ルーマニアにテクニカルセンター開設

(ルーマニア)

ブカレスト発

2021年06月30日

ベアリング大手のNTN(本社:大阪市)が100%出資するNTN SNRが、ルーマニア・シビウ市のNTN SNR ルルメンチ(Rulmenti、注1)の第4工場内にテクニカルセンターを開設し、6月25日に開業式を行った。同社は主にホイール、ギヤボックス、サスペンションで使用されるベアリングや等速(CV)ジョイントを生産し、多数の自動車メーカーに納入している。特に第3世代ホイールベアリングとCVジョイントを一体のコンポーネントとして納入できることが同社の強みだ。同社の欧州でのテクニカルセンターとして、フランス(2カ所)とドイツに続き、4カ所目がルーマニアに設置された。

写真 高いシェアを誇る第3世代ホイールベアリングとCVジョイントのコンポーネント (ジェトロ撮影)

高いシェアを誇る第3世代ホイールベアリングとCVジョイントのコンポーネント (ジェトロ撮影)

同社研究イノベーション開発部(Research Innovation Development Division)のクリストフ・ニコ副社長によると、このテクニカルセンターでは主に、全世界で需要増が予想される電気自動車(EV)に対応するベアリングを開発する。EVはエンジン車よりもギアが高速で回転するため耐熱性が求められ、また、電流がタイヤを通して地面に流れるときに生じる車軸の電食(注2)を防がなければならない。安定した品質を求めるためロボット化も進めている。

同社資料によると、エンジン、ギヤボックス、車軸、CVジョイント、タイヤという一連の動力伝達の過程でベアリングがもたらす二酸化炭素(CO2)排出量は現在、1km走行当たり約20グラムであることから、ベアリングの低摩擦化はグリーンディールの観点でも大きな意味を持つ。

NTNは2008年、フランスのSNRルールメンツ(Roulements)の株式51%を取得して筆頭株主となり、2015年に80%取得すると同時に社名を現在のNTN SNRに変更、2018年には株式を100%取得して完全子会社化した。

NTN SNR ルルメンチが立地するシビウ市の工業団地は、ハンガリー国境まで高速道路で3時間半とアクセスが良く、国際空港も隣接しており、フランクフルト、ミュンヘン、シュツットガルト、ドルトムント、ニュルンベルクなどドイツの主要都市やウィーン、ロンドン、マドリードなどへの直行便がある。そのため、NTN SNRのほか、ティッセンクルップ(thyssenkrupp、エンジン部品やサスペンション)、コンチネンタル(Continental、タイヤ)、アイエフエム(ifm、センサー)、ギュントナー(Güntner、冷凍機)など、大手製造業が集積している。

(注1)ルーマニア語で軸受、ベアリングの意味

(注2)ベアリング内部を電流が通過する際にスパークが発生し、接触部の表面が溶融する損傷

(西澤成世)

(ルーマニア)

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