反政府デモによる物流停滞で日系企業へも影響

(コロンビア)

ボゴタ発

2021年06月04日

コロンビアで4月28日から続いている反政府デモ(2021年5月7日記事参照)は、労働者団体と政府の交渉が難航して長期化している。企業活動や市民生活に大きな影響を与えている各地での道路封鎖について、デモを主導する中央労働者団体(CUT)は6月1日、道路封鎖を解除すると決定した。国防省は同日、1,003カ所で解除を確認したと発表したが、残りの封鎖地点については、CUTが解除に向けた呼びかけを行うとしているものの、めどは立っていない。

国内2位の取扱量を誇り、アジアとの貿易の窓口になっている太平洋岸のブエナベントゥーラ港では、港湾施設や港と主要都市を結ぶ幹線道路の封鎖により、ターミナル内に1万6,000本以上のコンテナがとめ置かれている。コーヒー輸出など日系企業が関連するビジネスでも遅延などの影響が出ている。

国防省は6月2日、港湾を封鎖していた1,000台以上の車両を移動させたとしたが、全国輸出業者連盟(ANALDEX)は、港の正常化には少なくとも20日は必要との見通しを示しているほか、全国海運代理店連盟(ASONAV)は、道路封鎖の完全かつ永久的な解除がない限り、正常化の見通しは立たないと述べている。

政府との対話は進まず、さらなる長期化の懸念も

CUTは、既に2020年6月にイバン・ドゥケ大統領に宛てた緊急提言の中で、ベーシックインカムや保健、雇用、教育、農村開発などの分野で政府へ対応を求めていた。加えて、現在の要求は、安全な社会運動が保障されるための合意書への署名、市民の街頭デモを取り締まる治安組織の非武装化、地方自治体首長に対し軍・警察に協力してデモ対応に当たるよう定めた法令575号の廃止などに広がっている。一方、政府は5月に低所得者層の高等教育無償化などを発表したが、全ての道路封鎖が解除されるまで交渉のテーブルにつかない姿勢を示している。

コロンビア産業連盟(Andi)は経済活動の正常化を目指し、オンライン署名サイトChange.org上で、道路封鎖や破壊行為、暴力に反対する呼びかけを開始した。6月3日時点で12万人超の署名が集まっている。CUTは6月9日にボゴタでの大規模デモを呼びかけており、今後の進展について引き続き注視が必要だ。

(茗荷谷奏)

(コロンビア)

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