ワクチン基金創設、寄付金によりワクチン接種を加速

(ベトナム)

ホーチミン発

2021年06月11日

ベトナム政府は、新型コロナウイルス感染症対策のためのワクチン基金を創設し、6月5日にハノイで式典を行った。同日付の政府サイトなどによると、式典には、ファム・ミン・チン首相らが出席し、基金への寄付を行った団体・個人を表彰するとともに、寄付への参加を呼び掛けた。

ワクチン基金は、国家予算だけでなく、国内外の団体・個人から寄付金を募り、新型コロナワクチンの購入、国産ワクチンの研究・製造などに充てる。資金だけでなく、ワクチンの寄付も受け付ける。基金は、5月26日付の政府決議53号(53/NQ-CP)および首相決定779号(779/QD-TTg)に基づき設立されており、財務省により管理される(注)。

ファム・ミン・チン首相は式典の中で、「ベトナムは新型コロナウイルスの感染拡大防止と社会・経済発展という2つの目標を達成してきた。しかし、英国やインドで発見された変異株により感染が急速に拡大するなど、状況は複雑化している」と現状についての見方を示した。その上で、「国民の通常の生活を取り戻すため、集団免疫の獲得を目指し、国民に迅速かつ無料でワクチンを提供する。ワクチンは、新型コロナウイルス感染症を根本的、長期的、戦略的かつ決定的に解決する手段だ」とワクチンの意義について説明した。

政府は、目標とする7,500万人向けに1億5,000万回分のワクチンを接種するには、25兆2,000億ドン(約1,184億円、1ドン=約0.0047円)必要としている。このうち、約16兆ドンを国の財政支出で、残りについて地方予算や民間企業などから調達するため基金を創設した(「家族と社会」紙6月3日)。6月5日午後10時時点で7兆6,360億ドンの寄付金(約束額も含む)が基金に集まった。式典では、寄付を行った国営企業や、外国企業など79団体の名前が公表された。団体には日系企業も含まれ、ワクチン基金に寄付した旨が当該企業のプレスリリースで公表されている。

(注)政府決議および首相決定では、基金への寄付とワクチン接種とは関連付けられておらず、基金を行った団体・個人が、ワクチン接種を優先的に受けられるわけではない。

(比良井慎司)

(ベトナム)

ビジネス短信 703e24eba54696f2