アゼルバイジャン、ザンゲズル鉄道回廊建設に向けトルコへ秋波

(アゼルバイジャン、トルコ、アルメニア)

イスタンブール発

2021年06月14日

アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は5月30日、バクーを訪問したトルコのアディル・カライスマイルオール運輸・インフラ相と会談し、トルコからナヒチェバン、アルメニアを経由してアゼルバイジャン本土をつなぐ、アラス川沿いのザンゲズル鉄道回廊建設の重要性を強調した。

アリエフ大統領は、この鉄道はトルコとアゼルバイジャンの同盟関係を強化するものだとしている。トルコは、ザンゲズル鉄道回廊がトルコとアゼルバイジャン、トルコとロシアをつなぐだけでなく、中国の「一帯一路」にもつながるものと期待している。トルコはカラバフ(注)復興需要に多大な関心を寄せており、既にトルコのゼネコンは、フュズリ・シュシャ高速道路(約100キロ)とフュズリ空港のプロジェクトへの参画が決まっている。アゼルバイジャン政府は、トルコ国民の支持が2020年の44日間にわたる武力衝突の支えとなったとして、復興事業にはトルコ企業を優先するとしている。

アゼルバイジャン政府は、約150万人のアゼルバイジャン人がカラバフに戻ると見込んでおり、インフラ、道路、農業、エネルギー、教育、医療などの復興プロジェクト実施に向け、既に13億ドル相当の予算をカラバフ復興基金に割り当てている。

一方、ザンゲズル鉄道回廊建設に関して、アゼルバイジャンと対立するアルメニアは強く反発している。アゼルバイジャンとトルコの結び付きを強化し、アゼルバイジャンの戦略的重要性を高める可能性があるからだ。アルメニア政府は、2020年11月10日のナゴルノ・カラバフ停戦協定はザンゲズル鉄道回廊建設にまでは言及していないとの見解だ。

(注)アゼルバイジャンでは、2020年の休戦協定で回復されたのがナゴルノ・カラバフ全域ではないこともあり、「新たに解放されたアゼルバイジャン領」と表現するが、本稿では便宜上「カラバフ」を用いる。

(中島敏博)

(アゼルバイジャン、トルコ、アルメニア)

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