政府が新型コロナの影響踏まえた長期経済予測を発表

(オーストラリア)

シドニー発

2021年06月29日

オーストラリアのジョシュ・フライデンバーグ財務相は6月28日、最新の世代間報告書(IGR)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表し、新型コロナウイルス感染拡大による経済的影響は長期化するとの見通しを示した。移民の減少などによって人口の伸びが鈍化するとともに、高齢化も進み、経済成長はこれまでの予測よりスローペースになるという。

IGRは、連邦政府による今後40年間のオーストラリア経済と予算の見通しを示す報告書で、2002年以降、約5年ごとに発表している。

今回のIGRによると、新型コロナウイルス感染拡大防止のための国境閉鎖措置に伴う移民の減少によって、過去12カ月間の人口増加率はわずか0.1%と、100年来の低水準を記録した。2024/2025年度(2024年7月~2025年6月)には移民の水準が回復するものの、人口の伸びはこれまでの予測より6年遅れとなり、2060/2061年度に3,880万人としている。IGRで長期人口予測が下方修正されたのは初めてだという。また、2060/2061年度には、65歳以上の人口割合が23%となり、潜在扶養率(65歳以上の人口に対する15~64歳の現役世代の人口比率)は現在の4.0から2.7になると見込んでおり、高齢化は引き続き進行するという。

オーストラリア経済は、今後40年間で年平均2.6%の成長が見込まれ、2060/2061年度には現在の2.5倍以上に達するものの、過去40年間の成長率(年平均3.0%)を下回ると予測している。IGRは、人口増加率の鈍化や高齢化による労働参加率の低下などに伴い、経済成長は生産性向上に大きく依存し続けるとしており、人材育成やインフラ、デジタルトランスフォーメーションへのさらなる投資が必要だと強調した。

財政見通しについては、財政赤字が現在のGDP比7.8%から、2036/2037年度に0.7%に減少するものの、医療や高齢者介護への支出の増加などによって、2060/2061年度には再び拡大し、GDP比2.3%になると予測している。

フライデンバーグ財務相は「新型コロナウイルスの影響を受け、人口はこれまでの予測よりも減少し、高齢化が進み、政府債務の水準は高まることが見込まれるものの、緊縮財政や増税ではなく、経済成長の実現によって財政健全化を目指す」と述べた。

(住裕美)

(オーストラリア)

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