2021年のGDP成長率予測、3.6%に上方修正

(スイス)

ジュネーブ発

2021年06月17日

スイス連邦経済省経済事務局(SECO)は6月15日の発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、2021年の実質GDP成長率予測(注:主要スポーツイベントが現在の予定どおり開催された効果を織り込んだ数値)を見直し、前回3月予測の3.0%から3.6%に上方修正した(添付資料表参照)。

3月初旬から段階的に進められている新型コロナウィルス対策の規制措置の緩和に伴い、スイス経済は急速に回復し始めた。また、主要貿易相手国の力強い需要回復に支えられ、工業生産は増加し、産業とサービスの両部門で指標が大きく改善している。緩和措置が計画どおり進めば、さらに経済回復は広範囲に広がるとSECOは予測する。特に長期にわたり厳しく規制されてきた個人消費部門は急速に回復し、深刻な打撃を受けてきた宿泊施設、飲食サービス、イベント関連部門もようやく「新型コロナ危機」を脱する見通しとした。SECOは、スイス経済が記録的な速さで成長し、2021年後半には「新型コロナ危機」以前の水準を上回るとし、企業は投資を増加し労働者数を拡大させるため、2021年の失業率は年平均3.1%まで改善すると見込んでいる。

経済リスクと3つのシナリオ

さらに、SECOは、不確実性は依然高いとし、主要な経済リスクを3つのシナリオで示した。1つ目は、倒産や大規模な解雇など、「新型コロナ危機」の二次的な影響により需要の伸びが鈍化するシナリオだ。変異株の出現などパンデミックが進む中で起こる後退要因も、経済にマイナス影響を及ぼし、回復の遅れにつながるとした。2つ目は逆に、スイスやその他先進国で予想以上に力強く経済が回復するシナリオだ。特に、「新型コロナ危機」下で膨張した家計貯蓄の一部が個人消費へ向かうことによって、回復につながる可能性が高いとした。3つ目は、需要の増加によりインフレが起こり、経済へ抑制効果が及ぶ「スタグフレーション」のシナリオで、政府や企業の債務拡大リスクが増し、金融市場や不動産市場で大幅な価格調整が起こることが懸念されるとした。

また、SECOは、最近合意された最低法人税率やEUとの関係における不確実性が増していることを指摘し、中期的にみると、ビジネスの場としてのスイスのリスクは高まったとした。

(注)スイスには、国際オリンピック委員会(IOC)、国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)など主要国際スポーツイベントの本部が置かれているため、オリンピック、サッカーのワールドカップ、欧州選手権の開催年には、放映権収入がスイスのGDPを押し上げ、翌年のGDPにはマイナスに作用する。

(竹原ベナルディス真紀子)

(スイス)

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