欧州委、IoT関連製品の寡占状況に懸念を表明

(EU)

ブリュッセル発

2021年06月11日

欧州委員会は6月9日、消費者向けのIoT(モノのインターネット)関連製品市場に関する競争政策上の論点を整理した中間報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。欧州委競争総局は、同市場における潜在的な競争上の懸念を特定するための「セクター別調査」を2020年7月に開始していた。暫定的な結論として、同市場に関係する多くの当事者が、音声アシスタント機能を含むオペレーティングシステム(OS)を内蔵したIoT関連のスマートデバイスについて、競争上の懸念を共有しているとした。

欧州委が参照したデータによれば、2020年時点で既にEU市民の11%が音声アシスタントを利用しており、音声アシスタント関連の製品の普及台数は、世界全体で2020年の約42億台から2024年には約84億台まで倍増すると見込まれる。EU市場ではアマゾン、グーグル、アップルの米国各社の製品が主流になっており、こうしたシステム開発から消費者製品までを手掛ける大手企業と競合するには、音声アシスタントの技術開発は投資コストが大きく、新規参入が難しい状況になっているという。

報告書によれば、音声アシスタントを含むOSを内蔵したIoT関連製品市場に関する競争上の懸念は、大きく4点に集約される。

  1. 排他性:スマートデバイスは多くの場合、1つの音声アシスタントシステムを採用しており、消費者による他の音声アシスタントシステムの選択を制約する、抱き合わせ販売が行われている可能性がある。
  2. 仲介的機能:音声アシスタントは、利用者を特定の製品・サービスの購入へと誘導する仲介的な役割を果たし、消費者が製品を検索する上で他社製品との競争を阻害する。
  3. データの占有による優位性:音声アシスタントは利用者の膨大なデータへのアクセスを可能にし、データの蓄積により競争優位性を拡大される。
  4. 相互運用性の欠如:現状では、製品間の技術的な互換性が確保されておらず、特定の音声アシスタントサービスが事実上の標準を形成し、関連製品市場において消費者の囲い込みが容易な環境が形成されている懸念がある。

欧州委のマルグレーテ・ベスタエアー上級副委員長(欧州デジタル化対応総括・競争政策担当)は「現時点では断定できないが、この市場での特定のゲートキーパー(IT大手)による商慣行は、将来的に競争法侵害行為の調査対象となる可能性がある」と述べ、EUのデジタル政策・競争政策の両面において今回の調査が必要だと説明した。欧州委は、中間報告書に対する意見を聴取する公開諮問(パブリックコンサルテーション)を9月1日まで実施し、2022年前半に最終報告書をまとめる予定。報告書の内容は、今後の競争総局による競争法執行の指針となるほか、欧州委が提案しているデジタル市場法案(2020年12月22日記事参照)の審議にも影響を及ぼすとみられる。

(安田啓)

(EU)

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