1~3月のGDP成長率、前年同期比マイナスも前期比で辛うじてプラスに

(メキシコ)

メキシコ発

2021年05月07日

メキシコ国立地理情報統計院(INEGI)は4月30日、2021年1~3月の実質GDP成長率(速報値)を発表した。前年同期比ではマイナス3.8%と6期連続のマイナスとなったが、前期比(季節調整済)では0.4%と辛うじてプラスになった。

前年同期比のGDP成長率を産業別にみると、製造業、鉱工業、建設、電気・ガス・水道で構成される第二次産業はマイナス3.0%だった。2020年末から続く世界的な半導体不足により一部の自動車メーカーが生産停止を余儀なくされたことや、2021年2月に米国南部を襲った大寒波により天然ガスの供給が一時的に停止し、メキシコ北部の州を中心に電力が不足したことなどが影響した。第三次産業(サービス産業)はマイナス4.2%と、2020年の第2四半期(マイナス16.3%)、第3四半期(マイナス8.9%)、第4四半期(マイナス5.0%)に比べて減少幅は縮小したものの、他の産業に比べ成長率は最も大きく後退した。2020年12月~2021年1月に新型コロナウイルス感染が再拡大し、2月中旬までメキシコ市首都圏を含む主要各都市で警戒信号が赤となり操業規制が強まったことや、外出自粛によって需要が減少したことが響いた。一方、第一次産業(農林水産・畜産業)は2.8%成長し、2020年第3四半期から3期連続でプラスを維持した。

前期比のGDP成長率を産業別にみると、第一次産業はマイナス1.3%、第二次産業は0.0%、第三次産業は0.7%だった。マイナスは農林水産・畜産業のみだが、鉱工業もゼロ成長だった。業種別の詳細なデータは、5月26日に発表され、その際に成長率が微修正される可能性もある。

大統領は6月ごろに危機前の経済水準に戻ると見込む

ロペス・オブラドール大統領は、同日の早朝記者会見で「わずかではあるが、成長している」とし、2021年1~3月期には新型コロナウイルス感染の再拡大の影響が大きかったにもかかわらずマイナスには転じなかったと強調した。前期比のプラス成長は「投資が活発化したことの証し」だと述べ、為替やインフレ率も安定していることから、2021年6月ごろには経済活動が「新型コロナ危機」前の水準に戻ると発言し、自信をみせた。

大蔵公債省は、国内のワクチン接種が進み、外需と原油価格にも回復がみられるとして、3月末にGDP成長率の見通しを4.6%から5.3%へと引き上げており、IMFも、米国経済の回復がメキシコに恩恵をもたらすとして4月6日に見通しを4.3%から5%へと引き上げている。IMF西半球局長のアレハンドロ・ワーナー氏は「米国経済の回復によっては、メキシコのGDP成長率が5%を超える可能性もある」としながらも、2021年の米国経済はサービス産業を中心とした再活性化が期待されることから、メキシコへの恩恵は2020年後半のそれよりも限定的なものになる、との見方を示した(「エル・エコノミスタ」紙4月29日)。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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