ビクトリア州、メンタルヘルス税導入へ

(オーストラリア)

シドニー発

2021年05月28日

オーストラリア第2の都市メルボルンを州都とするビクトリア(VIC)州政府は5月20日、2021/2022年度(2021年7月~2022年6月)の予算案の中で、メンタルヘルス対策強化のため、企業に対して新たに「メンタルヘルス・ウェルビーイング税」を課す方針を発表した。

対象となるのは、同国内での給与支払総額が年間1,000万オーストラリア・ドル(約8億4,500万円、豪ドル、1豪ドル=約84.5円)を超える企業で、2022年1月1日以降、1,000万豪ドルを超える給与支払額について1豪ドル当たり0.5%、1億豪ドルを超える場合は1.0%が課される。VIC州政府によると、メンタルヘルスの問題による経済的なコストは年間142億豪ドルに上り、うち19億豪ドルは雇用主の直接的なコストになっているという。今回の課税によって、VIC州政府は2024/2025年度までに約9億豪ドルを確保できるとしている。

一方で、中小企業支援の一環として、2021年7月1日以降、給与税の納税対象となる給与支払総額の閾値(いきち)を現在の65万豪ドルから70万豪ドルに引き上げる。また、地方の雇用主に対しては給与税率を現在の2.02%から1.2125%まで引き下げるとした。

不動産に対する増税も

VIC州政府はまた、高額な不動産に対する増税策も発表した。具体的には、200万豪ドル以上の不動産を対象に、2021年7月1日以降、印紙税率を現在の5.5%から6.5%に引き上げる。土地税についても2022年以降、180万豪ドルを超える土地の所有については現在の1.3%から1.55%に、300万豪ドルを超える場合は2.25%から2.55%にそれぞれ引き上げるとした。なお、不動産開発では、2022年7月1日以降、土地利用計画の変更によって生じた50万豪ドルを超える超過利潤に対して、最大50%を課税する方針を明らかにした。一方、一般的な住宅の購入や住宅用地などに対しては減免措置を実施するとした。

VIC州政府の増税方針を受け、連邦政府のジョシュ・フライデンバーグ財務相は「経済回復にブレーキをかけることになる」と懸念を表明している。

(住裕美)

(オーストラリア)

ビジネス短信 d5eac5d9085c8ef8