ハンガリー政府、EU復興基金のための計画を提出

(ハンガリー、EU)

ブダペスト発

2021年05月21日

ハンガリーのアーゴシュトハージ・サボルチ国務長官は5月12日、欧州委員会に対してEUの復興基金による支援を受けるための経済復興計画を前日の11日に提出したと発表した。今回提出した復興計画では返済が必要な96億ユーロの融資枠は使わず、返済不要の補助金72億ユーロ〔約2兆5,000億フォリント(約9,500億円、1フォリント=約0.38円)〕を活用するとしている。

この計画では、8つの分野の改革・投資プロジェクトが定められている。概要は以下のとおり。

  1. 人口動態と公教育(2,307億フォリント):公立学校の校舎の省エネ化、学習用のICT(情報通信技術)機器導入を含めたインフラ整備などを通してデジタルスキルとエコ意識も備えた世代を育成
  2. 高度で競争力ある人材(2,810億フォリント):産業分野別教育の近代化、職業訓練のデジタルカリキュラム開発、イノベーションエコシステムの強化などを通して競争力のある人材を輩出
  3. 地域開発(775億フォリント):再生可能エネルギー生産設備の設置を含む、発展が遅れた地域に対する複合的な開発の実施
  4. 治水管理(444億フォリント):主要な水供給システムや供給網の改良、モニタリングシステムの構築などを通した農業分野での競争力強化
  5. グリーンモビリティ(6,310億フォリント):交通システムのゼロエミッション化やデジタル化を含む公共交通機関の高度化
  6. グリーンエネルギー(2,625億フォリント):家庭への太陽光発電システム導入促進やスマートグリッドの拡張などを含む電力部門での脱炭素化とデジタル化促進
  7. 循環型経済への移行(1,030億フォリント):廃棄物管理インフラの開発やスマートで革新的かつ持続可能な産業やリサイクル材市場の強化
  8. ヘルスケア(8,570億フォリント):遠隔診断センターの新設やインフラや技術改善を通じた医療システムの安定性向上

同計画では、ヘルスケア分野への投資に最も力を入れており、全体予算の3分の1を占めている。それに次いで、グリーンモビリティや教育システムの包括的な発展を優先し進めていく予定だ。

ハンガリーでは、経済復興計画の下で利用できる融資枠については利用しないこととしている。グヤーシュ・ゲルゲイ首相府長官は4月24日の記者会見で、その理由を「融資枠は2023年末まで申請できる。現時点では可能な限り低い公的債務で経済を再開したい」と説明している。

欧州委員会は、今後2カ月以内に、EUが定める11の基準に基づいて同計画の評価などを行うとしている。サボルチ長官は「ハンガリーの経済復興計画はEUの共通目標に完全に合致している」と述べ、グリーン化とデジタル化の開発があらゆる分野に含まれているとした。今後、EUの意思決定プロセスに移るが、他の加盟国と同様、交渉を進めるという。政府は8月中の承認を期待するとしている。

(バラジ・ラウラ)

(ハンガリー、EU)

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