米燃料パイプライン停止の影響広がる、全面復旧にはなお時間

(米国)

ニューヨーク発

2021年05月14日

米国南部テキサス州と北東部ニューヨーク州をつなぐ燃料パイプラインの運営会社コロニアル・パイプラインが、犯罪集団「ダークサイド」からのサイバー攻撃を受けて、5月7~12日に同パイプラインを一時停止したが、その影響が各地で広がっている。ジョー・バイデン米国大統領は5月13日、ホワイトハウスでこの問題について会見し、12日に連邦政府や企業のサイバーセキュリティ対策の強化・向上を図る大統領令に署名(2021年5月14日記事参照)したことやその対策を説明した。また、事態が鎮静化に向かっていることを強調し、「地域ごとに今週末から来週までに正常な状態に戻ると予想している」「パニック買いは沈静化を遅らせるだけだ」「(ガソリンスタンドで)価格暴騰が発生した場合はすぐにやめさせる」とも述べて、人々が混乱を起こさないように訴えるとともに、業者の便乗値上げを強く牽制した。

5月7日に一時停止したパイプラインの操業は12日に再開しているが、通常供給に戻るまでにはなお数日かかるとされている。また、同パイプラインは全長8,850キロに及び、テキサス州で投入した燃料がニューヨーク州に到達するまでに通常15日程度かかるとされていることから、一時停止の影響が今後さらに表れることが懸念される。燃料逼迫を懸念した人々が給油所に殺到するなどして、ノースカロライナ、サウスカロライナ、バージニアの各州などの給油所では既に在庫切れが相次いでいる。アメリカン航空は11日、同パイプライン停止による燃料供給の影響を受けていない空港を経由するため、一部の便の経路を変更したことを明らかにしている。こうした事態を受け、フロリダ、バージニア、ジョージア、ノースカロライナの各州では非常事態宣言を発令。連邦政府でも前述の大統領令のほか、燃料輸送に関わるドライバーの労働時間制限を一時的に緩和したり、商船法(ジョーンズ法:米国内で物品輸送する船舶は国内建造、米国人乗り組みのものでなければならないとする法律)の適用を、メキシコ湾から精製燃料製品を輸送する船舶に対しては暫定的に免除したりするなど、同パイプライン停止による供給不安の払拭(ふっしょく)に努めている。

5月13日現在、全米自動車協会(AAA)によると、レギュラーガソリンの全米小売週平均価格は1ガロン(約3.8リットル)3.02ドルと前週から0.07ドル上昇し、2014年10月以来の高値を記録している。こうした状況に鑑み、AAAは南部や南東部を旅行するドライバーに対して、交通量の多い時間帯の運転を避けることやエアコンの使用を最小限に抑えることなどを呼び掛け、燃料節約を訴えている。

(宮野慶太)

(米国)

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