ロックダウン緩和進むアイルランド、ワクチン接種世帯の優遇制度も導入へ

(アイルランド)

ロンドン発

2021年05月06日

新型コロナウイルス感染症をめぐる情勢が好転しているアイルランドで、ロックダウン緩和の動きが段階的に進んでいる。4月12日から26日にかけて、学校での対面授業の全面再開や地域内での移動可能範囲拡大を皮切りに、緩和を進めてきた政府はさらに同月29日に、5月10日以降の新たな緩和計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同日から国内の地域間の自由な往来、美容室などのパーソナルケアサービス、美術館や図書館などを再開し、5月17日からは全ての小売店の営業再開を許可する。6月2日にはホテルなどの宿泊施設が一定の条件下で再開し、6月7日からは飲食店の屋外営業(1グループ6人まで許容)、屋内運動施設やレジャー施設(個人利用に限る)などが再開される予定だ。

一方、飲食店の屋内営業、屋内外での大規模なイベントの実施、海外渡航などの感染リスクが高い行動については、2021年後半における再開を目指し、6月末に議論が行われる予定で、政府は手堅く緩和を進める姿勢を崩していない。これに対し、アイルランドレストラン協会は「政府発表はホスピタリティ業界を分断した」と非難。宿泊施設と同時期の飲食店の屋内営業再開を求めている。

ワクチン接種の広がりに企業も期待

国内でのワクチン接種は、おおむね順調に進んでいる。ミホール・マーティン首相は4月29日の演説で、「16歳以上の3割近くの人が、少なくとも1回の接種を完了した」と述べ、これまでの成果を強調した。5月3日の政府発表によると、1回目の接種を終えた住民は全国で117万4,292人、2回目接種は44万7,578人に達している。5月10日からは接種者を優遇する「ワクチン・ボーナス」制度を設け、2回の接種が完了した住民には、他の完了者と計3世帯まで、マスク着用・社会的距離確保なしでの屋内での面会を認める。重篤化リスクがなければ、他の未完了者も1世帯まで含めることができる。

感染沈静化とワクチン接種拡大により、景況感も好転している。アライド・アイリッシュ銀行(AIB)が5月4日に発表したレポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、4月の製造業の購買担当者景気指数(PMI)は60.8で、1998年5月の調査開始以来、過去最高を記録した。オリバー・マンガン主任エコノミストは「企業は、ワクチン接種プログラムが経済を完全に再開させ、事業活動に大きな刺激を与えると期待している」と述べ、産業界の期待を代弁している。

(杉田舞希、尾関康之)

(アイルランド)

ビジネス短信 51969026a401603b