米カリフォルニア、干ばつ深刻で41郡に非常事態宣言

(米国)

サンフランシスコ発

2021年05月19日

米国カリフォルニア州では、干ばつが深刻化している。米国海洋大気庁などが発表している「米国干ばつモニター」のデータによると、5月11日時点で、カリフォルニアの面積の約7割で、干ばつの度合いが、5段階中2番目に深刻な「極度の干ばつ」または最も深刻な「類のない干ばつ」となっている(注1)。北カリフォルニアのサンフランシスコ・ベイエリアの多くの地域が「極度の干ばつ」の段階にある。同段階では、水の供給が農業・野生生物・都市が必要とする量を満たせないほか、季節を問わず火事が発生しやすくなることや、家畜の飼料への影響などがリスクとして指摘される。

干ばつの深刻な状況を受けて、同州のギャビン・ニューサム知事は4月21日、まず州内の2郡に干ばつの非常事態宣言を出し、州政府の各機関に対し、干ばつからの回復力を強化し、地域・ビジネス・生態系への影響に備えるための迅速な行動を指示した。5月11日には宣言の対象に39郡を追加し、計41郡(人口の約3割)が対象となった。宣言の対象郡は同時点では、州の北・中部が中心になっている(注2)。

ニューサム知事は5月10日のプレスリリースで、「カリフォルニアで気候変動の現実が極めて明らかである中、北・中部での深刻な水供給不足に対処するために緊急の行動を取る。同時に、今後数十年、地域を守るために水へのアクセスを強化する」と述べた。また、知事は同日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた総額1,000億ドルの経済対策(注3)の一部として、差し迫った干ばつ対策や長期的な水関連インフラ投資への51億ドルの支援パッケージを発表した。

州内各地では、利用者に自発的な水の使用制限を求める動きもみられる。例えば、緊急事態宣言の対象となっている北カリフォルニアのソノマ郡では、同郡の水道諮問委員会が5月4日、利用者に対して自発的に水の使用を20%削減するよう求める決議を可決。現在、同郡の水道事業者も、自発的な水使用の20%削減を利用者に促している。また、宣言の対象ではないサンタクララ郡でも、同郡の水道事業者が5月11日、2022年度(2021年7月1日~2022年6月30日)の水道料金の値上げを発表した。月額4.3~4.82ドルの範囲で値上げする見込みだ。

(注1)米国海洋大気庁は干ばつの度合いを、(D0)異常な乾燥、(D1)中程度の干ばつ、(D2)深刻な干ばつ、(D3)極度の干ばつ、(D4)類のない干ばつ、の5段階に分類している。同州はこれまでも干ばつの影響を受けており、2012年~2016年ごろに干ばつが発生した際にも、ジェリー・ブラウン知事(当時)が2014年1月に非常事態宣言を出した。米国干ばつモニターのデータによると、2014年7~10月ごろに、D3またはD4の段階にある地域の割合が8割台で推移した。

(注2)5月11日時点では、主要都市であるサンフランシスコ郡、ロサンゼルス郡、サンディエゴ郡などは対象になってない。

(注3)「California Comeback Plan」と呼ばれる復興計画で、州民への税金還付やホームレスへの住居支援、公立学校の改革、小規模事業者支援などが含まれている。

(石橋裕貴)

(米国)

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