米加州、2024年までにフラッキング禁止、2045年までに石油採掘廃止へ

(米国)

サンフランシスコ発

2021年05月06日

米国カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は4月23日、2024年1月までにフラッキング(注1)による石油採掘に対する新規許可発行を停止すること、また、2045年までに同州全ての石油採掘を段階的に廃止する計画を立てるよう、それぞれ同州の管轄機関に指示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

フラッキング許可発行中止に関しては、同州の環境保護局地質エネルギー管理室(CalGEM)が規則制定に直ちに取り掛かる。石油採掘廃止に関しては、カリフォルニア大気質委員会(CARB)が気候変動精査計画(注2)を通して、段階的に廃止する方法を査定していく。

4月23日に発表された同州プレスリリースでは、同州におけるフラッキング許認可とそれに伴うフラッキング活動は、2014年に施行した石油・天然ガス開発規制強化に関する法律(SB4)により、現在すでに最低レベルにまで減っている、と述べている。一方、石油産業グループは、同州の石油生産におけるフラッキングの割合は、実際には同州が示す割合(2%)よりも大きい17%だと主張しており、フラッキング禁止による影響がいかに大きいか論争が起きているとする報道もある(政治専門紙「ポリティコ」4月22日)。

ニューサム知事は2020年9月に発した知事令で、2024年までにフラッキング許可発行を中止するよう、州議会に指示していた。その後、スコット・ウィーナー同州上院議員らが2022年以降のフラッキング許可発行・更新の禁止などを定める法案(SB467)をまとめたが、2021年4月13日に上院委員会公聴会で却下された。ニューサム知事は以前、州議会の承認なしにはフラッキングを禁止する権限は知事にはない、と述べていたが、SB467が却下された後、環境保護グループから知事へのプレッシャーが増し、今回の発表に至ったのではないかと複数の現地メディアはみている。

カリフォルニア独立石油協会(CIPA)のロック・ジアマン最高経営責任者(CEO)は、(ニューサム知事の発表が)「フラッキング禁止により州内石油生産を減らしても、カリフォルニアで毎日140万バレルの石油が必要とされる事実は変わらないだろう」と公式発表で述べた。

カリフォルニア大学サンタバーバラ校の調査によると、カリフォルニア州の原油生産は、全米3位だった1985年をピークに減少しており、2019年時点では全米7位。2017年時点で、カーン、ロサンゼルス、モントレー、フレズノ、ベンチュラの5郡が同州原油生産の91%を担っていた。

(注1)化学物質を含む高圧水を使用したシェールガス・オイルの掘削方法で、環境汚染や地盤への影響を懸念する見方がある。

(注2)2006年に可決されたカリフォルニア温暖化解決法案(AB-32)に基づき作成された、温室効果ガス削減のための包括的かつ多年度にわたる計画。

(田中三保子)

(米国)

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