全インドの日本商工会・日本人会が「規律ある退避」を呼び掛け

(インド)

ニューデリー発

2021年05月10日

インドで、新型コロナウイルス感染が拡大している。昨今の日本での報道やネットでの書き込みにおいて、盛んにインドでの新型コロナウイルス感染状況の悪化やインド変異株の脅威が強調され、インドからの入国を禁止すべきとの声が大きくなっていることに、在留邦人は不安とともに危機感を抱いている。このような動きに対して、全インドの日本商工会組織および日本人会は5月8日、日本国内や帰国者の感染リスクを限りなく下げ、安心してもらえるように、在留邦人に対して「規律ある退避」を求める文書(添付資料参照)を出し、協力を呼び掛けた。

ポイントとしては、これまで以上に外部との接触を避け、特に帰国前1週間は細心の注意を払って生活すること、日本帰国後の強制隔離後の自宅待機についてもしっかり順守することなどをうたっている。さらに、インドからの帰国者に対する強制隔離期間は5月10日から、これまでの3日間から6日間に延長されるが、この期間の妥当性を科学的根拠に基づき、さらに延長を検討するよう日本政府に依頼する内容になっている。

また、帰国に際して、出国前72時間以内のPCR検査証明書の取得が厳しい状況になっている点を踏まえ、日本政府の在留邦人支援助成金制度を活用し、日本人が集積するデリー近郊のグルグラム市に、日本の厚生労働省が指定する陰性証明書が確実に取得できる日本人専用のPCR検査施設を設置する方向で検討が進んでいる。デリー日本人会およびインド日本商工会と日系の医療体制提供機関、日系のホテルが協力して実施する。政府助成金を活用するため個人の検査料は無料となり、全インドの邦人の利用が可能だ。早ければ5月中旬には開始される見込みだ。

日本の一部報道で、特にデリー首都圏においてPCR検査の予約ができない、証明書の発行に4、5日要するというような報道も散見されたが、現状ほとんどの帰国者が問題なく取得できているので、過度に心配する必要はない。日本大使館は、検査機関に対し便宜を要請する文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を用意したほか、信頼できる検査機関も紹介している。ただし、検査能力が逼迫しているのは事実で、1週間以上前から予約するなど時間的余裕を持った対応が必要だ。

広がる支援の動き

インドの危機的な状況を受け、日本政府はインドへの55億円の緊急支援を表明した。その第1陣となる支援物資が5月7日、デリー空港に到着した。当地日系企業の間でも、インドへの支援を検討する企業が増えている。インド日本商工会は5日、日系企業の支援内容をまとめたプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。このほか、個別企業から支援したいがどうしたらよいか、という問い合わせも増えている。インド外務省によれば、民間からの医療支援は、一元的にインド赤十字社が窓口となっているとのことだ(注)。

在インド日本人社会は、大使館・総領事館、商工会組織、日本人会が協力し、一致団結して未曽有の「新型コロナ危機」を乗り越えようとしている。

(注)支援を検討される企業は、直接、赤十字社に連絡するか、必要に応じてインド日本商工会あるいはジェトロ・ニューデリー事務所まで照会されたい。

(村橋靖之)

(インド)

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