米サンフランシスコ・ベイエリアの複数都市で試験的な所得保障制度実施の動き

(米国)

サンフランシスコ発

2021年04月01日

米国カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリアに所在する複数の自治体や非営利団体が低所得層向けに所得保障プログラムを試験的に実施することを明らかにした。

オークランド市(注1)は3月23日、同市内の低所得の600世帯を対象に、最低18カ月間に月額500ドルを支給する所得保障プログラムの試験的実施を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同市は2021年春からの支給開始を目標にしている。同プログラムでの低所得の基準は、地域の世帯所得中央値の50%以下(3人家族の年間世帯所得で約5万9,000ドル)かどうか。ただし、申請枠の半分は、所得が連邦法定貧困レベルの138%未満(3人家族の年間世帯所得で約3万ドル)の低所得世帯に割り当てられる。また、同プログラムは人種間での経済的不均衡の解消を主な目的に掲げており、受給者は、18歳未満の子供が少なくとも1人いるBIPOC(注2)家庭に限られる。不法移民でも上記の条件を満たせば受給対象となる。給付金の使途に条件はない。

マリン郡(注3)議会も3月23日、同郡の非営利団体マリン・コミュニティー・ファンデーション(MCF)が運営予定の試験的所得保障プログラムに、同郡から40万ドルを支援することを可決した。同プログラムでは、17歳以下の子供が少なくとも1人いる低所得層の有色人種女性125人を対象に、月額1,000ドルを24カ月間支給する。MCFは5月からの同プログラム開始を予定している。プログラムには職業訓練やカウンセリングなどの支援サービスも含まれる(「サンフランシスコ・クロニクル」紙電子版3月24日)。

サンフランシスコ市は3月25日、試験的な所得保障プログラムとして、同市内の芸術家約130人に月額1,000ドルを6カ月間支給すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。対象となる芸術家の定義は音楽やダンス、文芸などを通じて同市コミュニティーに積極的に関わっていること。また、プログラムへの申請条件として、18歳以上で、新型コロナウイルス感染拡大の影響を最も受けた地域に居住していること(同市の感染者数データなどに基づき郵便番号で識別)、住宅都市開発省(HUD)が定める低所得水準未満の所得であること(年間で単身:6万900ドル未満、4人家族:8万7,000ドル未満)などを挙げている。既に申請受け付けを開始しており、5月から支給を開始する予定だ。同市は芸術家向けプログラム以外にも、複数の所得保障プログラムを策定している。

北カリフォルニアでは、これらベイエリアの自治体に先駆けて、農業地として知られるセントラルバレーの都市ストックトンで、2019年から実際に低所得層の住民125人を対象に月額500ドルを24カ月支給する所得保障プログラムが試験的に行われた。

(注1)サンフランシスコ湾東側(イーストベイ)に位置する。推定人口:約43万人(2019年7月1日時点)。年間世帯所得中央値:7万3,692ドル。人口比率:白人28.3%、黒人23.8%、ヒスパニック系27.0%、アジア系15.5%(米国国勢調査局)。

(注2)黒人、先住民、有色人種を指す。

(注3)サンフランシスコ湾北側(ノースベイ)に位置する。推定人口:約26万人(2019年7月1日時点)。年間世帯所得中央値:11万5,246ドル。人口比率:白人71.1%、黒人2.8%、ヒスパニック系16.3%、アジア系6.6%(米国国勢調査局)。

(田中三保子)

(米国)

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