トランスコスモスの大連子会社、中国建築業界の市場開拓を視野に

(中国、日本)

大連発

2021年04月30日

中国・大連市には、日本向けのITアウトソーシングサービスを展開する企業が集積しており、日系企業も少なくない。トランスコスモスの100%子会社である大宇宙設計開発(大連)は、住宅設計サービスのオフショア拠点として注目される。4月16日、同社の李永軍総経理に、事業環境や今後の展望について聞いた。

(問)中国事業の概要は。

(答)トランスコスモスは1995年に天津市に進出して以来、中国に26拠点を設けている。大連市には2006年に進出し、社員は約400人で、主に住宅やビル設計を行っている。2013年には黒龍江省大慶市に大連拠点の子会社を設立。大連拠点を補完する位置づけで、50人の態勢でCAD(computer-aided design、キャド)に特化した業務を行っている。中国拠点のうち住宅設計関連業務を行うのは大連と大慶のみとなる。

住宅設計では意匠図の作成から詳細設計、特注部品の加工図面、洗面台など各設備の配置図の作成などを行い、ビル設計では外壁のカーテンウォールを設計するなど、業務範囲は多岐にわたる。大連拠点の設立当初は平面図の対応が中心だったが、現在は3D、構造関連の計算など難易度の高い業務に集中し、比較的簡単な業務は大慶に移すことで、経営資源配置の最適化を図っている。

(問)人材採用と課題は。

(答)従業員はほとんどが東北3省の出身だ。大学で建築や機械を専攻した理系人材のほか、理系の素養のある文系人材も幅広く採用している。大連は東北3省の理系の複合人材(日本語のできる理系人材)を、大慶は同市周辺の理系人材を採用しやすいことが強みだ。新卒採用時に日本語は必須条件ではなく、内定者には入社前後に日本語を教育し、社員の95%は日本語での対応ができる。

東北3省では理系人材や日本語人材が豊富だが、近年は一流大学卒の優秀な人材は東北3省以外の地域に流出する傾向が強い。中堅クラスの大学卒や短大卒の人材の採用が増加している。

(問)新型コロナウイルスの影響は。

(答)以前は、日本国内の新規の業務を受注する際、大連の技術者を日本の顧客先に派遣し、関連業務を習得させ、彼らが帰国して大連の設計チームに業務を教えてスタートする流れだった。現在、日本への渡航が難しいため、新規業務の開拓が滞っている。一方、日本国内では新型コロナウイルスの影響を受けて、在宅勤務に切り替えざるをえない顧客が増え、在宅では対応できない業務を大連に発注する動きがあり、トータルで見た業務量は感染拡大前と変わっていない。

(問)今後の展望は。

(答)2017年から中国国内業務も受注しており、内装設計や空調設備設計、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)設計支援を行っている。中国政府は数年前から建築業におけるプレハブ工法を推進している。今後、現場で働く労働者の減少に伴い、施工時間の短縮と効率の向上につながるこの工法を採用する動きがさらに加速するとみている。当社は内装設計やカーテンウォールの設計を得意としていることから、今後は中国の地場企業や政府向けの営業も強化していく方針だ。

(呉冬梅)

(中国、日本)

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