海賊版動画配信サイトの収入が2年連続で減少

(ロシア)

サンクトペテルブルク発

2021年04月05日

ロシアの海賊版動画配信サイトの収入が減少傾向にある。調査会社のグループIBは3月31日、動画コンテンツを違法に提供する海賊版サイトの2020年の収入(推定)が前年比7.1%減の5,900万ドルになったと発表した(添付資料図参照)。初めて減少に転じた2019年に続いて2年連続の減少となった(2019年11月19日記事参照)。広告収入の減少が主因。他方で、無料の海賊版への消費者の関心の高まりや海賊版サイトの技術の巧妙化など、著作権保護対策には課題も残る。

この収入が減少した背景には、海賊版サイトへの広告出稿の減少に伴い広告単価が低下したことがあげられる。グループIBによると、規制当局は海賊版サイトの主要広告主で非合法取引の温床でもあるギャンブル運営者などに対し、あらゆる取引の監視を強化。これに伴い海賊版サイトへの広告出稿が減少した。また、広告の需要減を受けて2019年は6ドルだったインプレッション単価(注)が2020年には5ドルに低下し、海賊版サイトのさらなる収入減につながった。

その一方で消費者は海賊版サイトを求める傾向にある。グループIBによると、検索エンジンで無料の動画コンテンツに関するキーワードの検索回数は前年比12.4%増の118億回を記録。特に2020年4月には単月過去最大の14億回にのぼった。しかし、海賊版サイト側が膨大なアクセス負荷に耐えられなかったため、収入の拡大には至らなかった。

海賊版サイトによる取り締まりへの対抗技術が高度化している点も課題だ。検索サイトは著作権保護の観点から、海賊版サイトへのリンクを検索結果から削除することでユーザーのアクセスを防いでいる。しかしグループIBは、海賊版サイトがリンク削除措置を回避する技術を開発し、ユーザーが容易にアクセス可能になっていると指摘。対策強化が急務であると警鐘を鳴らす。

(注)広告表示1,000回当たりで発生する料金。CPM(コスト・パー・ミル、コスト・パー・マイルの略)ともいう。

(一瀬友太)

(ロシア)

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