ドゥテルテ大統領が法人税の改正法案(CREATE)に署名

(フィリピン)

マニラ発

2021年04月07日

フィリピンのドゥテルテ大統領は3月26日、税制改革の第2弾(法人向け諸税の見直し)となるCREATE法案に署名を行い、政府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいて署名後の主要な内容を発表した。同法案は2月、上下両院の協議会で可決されていた。大統領は署名に当たり、議会可決案の複数の項目について拒否権を発動し、内容を一部修正した。同法案は、政府の官報などに法案の完全な内容が掲載されてから15日後に発効となる見通し(注)。

同法案では、法人所得税の減税など景気浮揚を目的とした措置と、これまで投資誘致機関が提供してきた各種インセンティブの整理・合理化が盛り込まれており、ドゥテルテ政権は同法案を最も重要な経済政策の1つと位置付けてきた。政府の発表によると、署名後の主な内容は以下のとおり。

  • 内国法人の法人所得税率を、現行の30%から25%へ引き下げる。なお、課税所得が500万ペソ(約1,150万円、1ペソ=約2.3円)以下、かつ総資産(法人の事務所・工場・設備が立地する土地は算入から除く)が1億ペソ以下の内国法人は、20%となる。新しい税率は、2020年7月1日から遡及(そきゅう)して適用。
  • 居住外国法人に課される法人所得税率を、フィリピンを源泉とする課税所得に対して、現行の30%から25%へ引き下げる。新しい税率は、2020年7月1日から遡及して適用。
  • 内国法人および居住外国法人に課される最低法人所得税(MCIT)率を、2020年7月1日から2023年6月30日にかけて現行の2%から1%へ引き下げる。
  • CREATE成立後は、政府の定める戦略的投資優先計画(SIPP)に該当する新規事業に対して税制優遇措置を適用。事業の立地や業種を基に、享受できる優遇措置が決まる。該当する新規事業について、輸出企業の場合は、4~7年の法人所得税免税(ITH:インカム・タックス・ホリデー)を受ける。その後、(1)10年間にわたって売上粗利(Gross income earned)に5%の特別法人所得税率を適用、もしくは、(2)10年間にわたって各種の追加控除を利用した上で一般法人所得税率を適用、のいずれかを選択する。

フィリピン経済界は大統領の署名におおむね肯定的

フィリピン商工会議所(PCCI)、フィリピン半導体・電子工業会(SEIPI)やマカティ・ビジネス・クラブなどの主要な経済団体は、大統領のCREATE法案署名に対して肯定的な見解を示している(「ビジネスミラー」紙3月28日)。新型コロナウイルス感染拡大により、多くの企業の事業活動が困難な中で、法人所得税の減税は有益だとフィリピン経済界は評価している。また、貿易産業省(DTI)や財務省(DOF)などの経済官庁は、同法成立により、これまで投資家が直面していた税制改革の進展に関する不確実性が消え、フィリピンへの投資が拡大すると期待している。

(注)4月6日時点で、同法案は官報に掲載されていない。フィリピン内国歳入庁(BIR)は、同庁のウェブページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでCREATE法案、および同法案に関する大統領の拒否権発動内容について公開している。

(吉田暁彦)

(フィリピン)

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