温室効果ガス排出削減のため、低排出技術へさらなる投資

(オーストラリア)

シドニー発

2021年04月23日

オーストラリアのスコット・モリソン首相は4月22日、国際的なパートナーシップの下で行われる温室効果ガス低排出技術の研究開発や実証などに対して、5億6,580万オーストラリア・ドル(約469億6,140万円、豪ドル、1豪ドル=約83円)を拠出すると発表した。

連邦政府は低排出技術への投資による温室効果ガス排出削減を目指しており、水素、電力貯蔵、低排出の素材製造(鉄鋼、アルミニウム)、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)、土壌炭素貯留を優先分野として定めている(2020年9月25日記事参照)。今回の発表はこうした連邦政府の取り組みを強化するもので、既に協力関係にあるドイツ、日本、韓国、シンガポール、英国、米国などとの共同出資によって、オーストラリアで行われる低排出技術関連プロジェクトを支援する。潜在的なパートナーとは既に協議を進めているという。

また、モリソン首相は21日、低排出技術のうち、水素やCCS、CO2回収・利用・貯留(CCUS)に関するプロジェクトに対して5億3,920万豪ドルを投資する方針を打ち出した。水素については、新たに地方部で4カ所の水素ハブ(注)を設置するとともに、水素の原産地認証スキームの開発や法整備のため、2億7,550万豪ドルを投じる。残りの2億6,370万豪ドルはCCSとCCUS関連のプロジェクト支援に充てる。

首相は「低排出技術への投資によって、排出量を削減するとともに、経済成長と雇用創出を促進し、エネルギーコストを低減することができる」と自信を見せた。これらの政策は、5月11日に発表予定の2021/2022年度(2021年7月~2022年6月)予算案に盛り込まれる。

オーストラリアは2030年までに温室効果ガス排出量を2005年比で26~28%削減するとの目標を定めている。ただし、連邦政府はカーボンニュートラルの達成に向けた具体的な目標に正式にコミットしておらず、モリソン首相は「可能な限り早く、できれば2050年までに排出実質ゼロを目指したい」と述べるにとどまっている。

(注)産業、運輸、エネルギー市場といった多業種の水素ユーザーが1カ所に集まる大規模需要集積地。

(住裕美)

(オーストラリア)

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