G7初の貿易相会合、WTO改革やデジタル貿易推進などで一致

(英国、世界)

ロンドン発

2021年04月08日

主要7カ国(G7)の貿易相会合が、3月31日にオンラインで開催された。貿易に特化した大臣会合はG7で初めてで、WTO改革やデジタル貿易、気候変動対応などについて議論を交わした。2021年にG7議長国を務める英国のエリザベス・トラス国際通商相が議長を務め、日本からは茂木敏充外相と梶山弘志経済産業相が出席したほか、3月1日の就任後間もないWTOのンゴジ・オコンジョ・イウェアラ事務局長も参加した。

トラス国際通商相は会合後、議論の結果をまとめた議長声明(原文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語仮訳PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))を公表。WTO改革の重要性を強調し、透明性や途上国地位(注)、紛争解決制度について議論を進める必要があるとの考えで一致した。また、産業補助金などの市場歪曲(わいきょく)的な慣行にも対処するとしている。

議長声明では、貿易の現代化にも言及。とりわけ、温室効果ガス排出実質ゼロに向けた機運が高まる中、持続可能なサプライチェーンの推進などに焦点を当て、閣僚間で議論を深める考えを示した。持続可能性の観点では、漁業補助金交渉で具体的成果を上げる決意にも言及している。さらに、新型コロナウイルス感染症に関連して、保健関連製品の貿易円滑化やサプライチェーン強靭化に寄与する貿易政策の推進で一致。貿易政策とジェンダー平等に関する研究など、女性の経済的エンパワーメントの観点での貿易現代化の重要性も強調した。

声明ではさらに、デジタル貿易について考えを表明。「新型コロナ禍」からの復興においてデジタル貿易が中心的役割を果たし得ると強調し、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)、消費者・企業保護、国境を越えた円滑な物品・サービス移動を可能にする仕組みの重要性について一致したとしている。G7各国はWTOでのルール作りを後押ししつつ、11月末にスイスで開催される第12回WTO閣僚会議までに具体的な進展を目指す。

中国を強く警戒

トラス国際通商相は会合に先立つ3月30日、「フィナンシャル・タイムズ」紙の取材で、「中国と世界貿易体制における中国の振る舞いに対して厳しい姿勢で臨むべき時だが、(同時に)WTOの現代化も必要。WTOは多くの点で(発足した)1990年代のまま行き詰っている」とコメント。中国に対してG7が一致して対峙する必要を指摘しつつ、そのためにもWTO改革とルール作りが不可欠との考えを強調した。

次回のG7貿易相会合は5月に英国で、対面形式で開催される予定。

(注)「特別のかつ異なる待遇(Special and Differential treatment)」を指し、WTO協定上、途上国や後発開発途上国に対して、義務の免除や緩和など特別または先進国と異なる扱いを認めているもの。

(宮崎拓)

(英国、世界)

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