新型コロナ対策めぐる連立政権内の対立受け、マトビチ首相辞任

(スロバキア)

ウィーン発

2021年03月31日

スロバキアのイゴル・マトビチ首相は3月30日、新型コロナウイルス対策をめぐって連立政権内で対立が続いていることを受け、ズザナ・チャプトバー大統領に辞表を提出した上で、自身と同じ政党「普通の人々(OLaNO)」に所属するエドゥアルド・ヘーガー財務相とのポスト交代を申し出た。チャプトバー大統領はそれを認め、ヘーガー財務相に組閣を委任、マトビチ首相が財務相になることが決まった。

1年前の2020年3月21日にマトビチ党首率いるOLaNOと「われわれは家族(Sme rodina)」「自由と連帯(SaS)」「人々のために(Za ludí)」の4党による連立政権が発足した。当初から新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンの必要性やワクチン入手など、新型コロナウイルス対策をめぐる意見の対立がみられた。2月にマトビチ首相が連立パートナーの反対にもかかわらず、ロシア製ワクチン「スプートニクV」を200万回分購入したことにより、対立が激化していた。スロバキアの英字紙「スロバク・スペクテータ」によると、3月に入って感染状況が一層悪化する中、連立与党の足並みがそろわずに内閣再編の議論が高まり、SaSのリヒャルト・スリク副首相兼経済相を含む閣僚6人が次々に辞任した。そのような状況を受け、マトビチ首相は連立与党内の反発をかわすため、首相の座を退き、ヘーガー財務相が首相の座につくというポスト交換の提案をするに至った。これで連立政権内の対立は収束に向かうとみられ、3月中に辞任した閣僚のほとんどが復職する見通しだ。

へーガー新首相は44歳、ブラチスラバ経済大学卒。会社経営を経て2018年にOLaNOから国会議員選挙で当選した。2020年の再選後に財務相に就任。「謙虚で冷静」とされているヘーガー氏は連立与党の信頼と支持を得て、連立の葛藤を乗り越える能力があると報じられている。

へーガー新首相の誕生で全ての問題が解決されたわけではないが、最近の世論調査では、SaSを除く3与党の支持率は大幅に下落しており、議会解散と前倒し総選挙を避けるためにも連立政権が維持されていく見通しだ。仮に今すぐに総選挙が行われた場合、ペーター・ペレグリーニ前首相が2020年6月に立ち上げた中道左派の新党「声-社会民主主義(HLAS-SD)」が大差で第1党になるとの見方も出ている。

(エッカート・デアシュミット)

(スロバキア)

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