新型コロナ禍でのアジア系への人種差別、カリフォルニア州で報告最多

(米国)

サンフランシスコ発

2021年03月23日

米国の非営利団体ストップAAPIヘイト(注1)は3月16日、同団体に報告されたアジア系住民などへの差別的事件をまとめた報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。

2020年3月19日~2021年2月28日に報告された差別的事件は3,795件に上った。このうち、「言葉による嫌がらせ」が70%と最も多く、「敬遠」が20%、「身体的暴行」が11%だった。発生した場所は、ビジネスの現場(店舗や飲食店などサービス提供を受ける場)が最も多くて35.4%、路上が25.3%、オンライン上が10.8%。差別された人たちを帰属別に見ると、中国系(42%)が最も多く、次いで韓国系(15%)、その他は各10%未満だった(日系:6.9%)。報告者の68%は女性が占め、年齢別では、26~35歳が30%と最も多く、36~45歳が20%、18~25歳が16%だった。

州別では、カリフォルニア州が1,691件(全体の45%)と圧倒的に多く、2位のニューヨーク州(517件、約14%)、3位のワシントン州(158件、約4%)と続いた(注2)。

サンフランシスコ・ベイエリアでは、2021年に入ってからアジア系高齢者を狙った暴行事件が相次いでおり、死者も出ている。直近では、3月17日午前10時半ごろ、街灯にもたれかかっていた70代の中国系女性が白人男性に突然、顔面を殴打された。こうした状況を受け、サンフランシスコ警察はアジア系住民が多く住む地域を中心に見回りを強化している。サンフランシスコのロンドン・ブリード市長は「サンフランシスコは、アジア系コミュニティーへの支援を続け、コミュニティーに対する犯罪を一切許容しない」と述べた。

(注1)アジア太平洋企画政策議会(A3PCON)と、差別是正措置のための中国人会(CAA)、サンフランシスコ州立大学アジア系米国人研究学部が共同で2020年3月19日に設立。新型コロナウイルス感染拡大に伴って急増したアジア系米国人(AA)やパシフィック・アイランダー(PI、ポリネシア諸島など太平洋諸島を起源とする人々)に対する暴行や嫌がらせなどを追跡し対応するために立ち上げられたもの。

(注2)2019年国勢調査に基づくAAとPIの推定人口割合は、全米で6.1%、カリフォルニア州16.0%、ニューヨーク州9.1%、ワシントン州10.4%。

(田中三保子)

(米国)

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