メルコスール創設30周年首脳会議で対外通商交渉の柔軟化を議論

(アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア)

ブエノスアイレス発

2021年03月30日

3月26日に、メルコスール創設30周年を記念し、メルコスールの正式加盟国アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイと、準加盟国のチリ、ボリビアの各国首脳がオンライン形式で首脳会議を行った。会議では、メルコスールの正式加盟国が域外国・地域と通商協定を単独で締結することを認めていない現在の「メルコスール原則」の柔軟化について、意見が交わされた。

会議の冒頭、現在議長国を務めるアルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は「党派やイデオロギーに関係なく、国際的に注目され、長期的な利益を生み出すことができる、より強く、より団結した地域ブロックを持つことが、全ての加盟国の利益になる」と述べ、メルコスール加盟国の結束を呼び掛けた。

ブラジル、パラグアイ、ウルグアイの首脳もそれに同意したが、「メルコスール原則」の柔軟化については立場の違いが明らかだった。

3月26日付のウルグアイ大統領府発表によると、同国のルイス・ラカジェ・ポウ大統領は「国民は国際舞台で前進することを求めている。ウルグアイは前に進まなければならず、だからこそメルコスール原則の柔軟化の議論を正式に提案する。ウルグアイは、メルコスールがこの問題について決断を下すことを必要としており、この問題に関する大きな対話、大きな委員会に割く時間はなく、われわれは行動しなければならない」と述べた。

また、3月26日付のアルゼンチン現地紙「ラ・ナシオン」(電子版)によると、ラカジェ・ポウ大統領は「メルコスールが国際舞台で重きをなしていることは明らかだが、メルコスールが重しになってしまってはいけない。メルコスールを、わが国が身動きを取れなくなるようなコルセットにするつもりはない」とも述べた。これに対して、アルゼンチンのフェルナンデス大統領は「われわれ自身が重荷になっているのだとしたら残念だ。われわれは誰の重荷にもなりたくない。重荷とは船から投げ出されるようなもので、重荷が重ければ、船から降りるのが一番簡単だ。しかし、われわれは誰の重荷にもならない。私にとって、メルコスールの一員であることは名誉なことだ」と述べ、両者間の緊張が高まったと伝えられた。

ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領も、加盟国単独での域外国・地域との通商協定の交渉開始や、メルコスールの意思決定プロセスの変更、メルコスール対外共通関税の引き下げ、域内の貿易障壁の削減を主張し、「規則が拒否権の道具や永続的なブレーキになってはならない」と述べ、かねて主張していたメルコスール原則の柔軟化を求めた。これに対して、フェルナンデス大統領は「対外共通関税の見直しは、第三国とメルコスールの通商交渉を考慮しながら、域内の付加価値を高める上で存在する不整合を正すこと、農工業部門と工業部門のバランスを保つことに基づいている」と述べ、域内産業の保護を重視する姿勢を示した。対外共通関税の見直しについては、4月22日に開催されるメルコスール4カ国の外相および技術チームによる会議で議論される。

また、議決権のない準加盟国ボリビア(注)のルイス・アルセ大統領は「ボリビアの加盟はメルコスールを強化し、南米大陸の統合に貢献し、メルコスール加盟国と太平洋をつなぐ役割を果たすことができる」と述べ、ボリビアがこの関税同盟に正式に参加する意思があることを繰り返し主張した。

(注)ボリビアの正式加盟については、2012年12月に加盟議定書が署名されたが、正式加盟国4カ国議会での批准待ち。現時点でブラジルが批准していない。

(西澤裕介)

(アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア)

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