世界初の褐炭水素プロジェクト、施設の運転開始

(オーストラリア)

シドニー発

2021年03月15日

オーストラリアの大手エネルギー会社AGLエナジーと、川崎重工業、電源開発、岩谷産業、丸紅、住友商事が参画する水素エネルギーサプライチェーン(HESC)プロジェクトは3月12日、ビクトリア(VIC)州に建設した褐炭ガス化・水素精製設備と水素液化・積荷基地が運転を開始したことに伴い、同設備を公開した。

HESCプロジェクトは、VIC州ラトロブバレーで産出される褐炭から水素を製造し、同州ヘイスティングス港で液化・積荷して、日本の神戸にある液化水素荷役実証ターミナルへ輸送する、世界初の実証事業だ(2018年4月24日記事参照)。日本政府だけでなく、連邦政府およびVIC州政府も支援する同プロジェクトは、2050年までにオーストラリアで8,000人以上の雇用を創出し、年間110億オーストラリア・ドル(約9,350億円、豪ドル、1豪ドル=約85円)以上の国内総生産(GDP)を生み出す可能性があるとして大きな期待が寄せられている。

今後は、褐炭ガス化・水素精製設備と水素液化・積荷基地の機能・性能確認を行った後、両施設を連携した運転試験を実施する予定だという。また、2021年中には、日本からヘイスティングス港に液化水素運搬船が来港し、輸送試験を実施する計画となっている。

エネルギー・排出削減担当相のアンガス・テイラー氏は、「HESCプロジェクトは、オーストラリアが世界の水素産業の発展において重要な役割を果たしていることを示す好例だ」と述べた。また、「同プロジェクトの進展は、低排出技術の利用によって二酸化炭素(CO2)排出量を削減するという連邦政府のアプローチが機能していることを示している」として、自信を見せた。

(住裕美)

(オーストラリア)

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