米FRB、金融政策の現状維持を決定

(米国)

ニューヨーク発

2021年03月19日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は3月16、17日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.00~0.25%とする金融政策の現状維持を決定するとともに(添付資料図参照)、米国債などを月1,200億ドル購入している現状の量的緩和策の現状維持も決定した。今回の決定も前回と同様、全会一致だった。

FOMCの声明文では、米国経済の状況判断について、「経済活動と雇用の指標は最近上向いているが、新型コロナウイルス感染拡大による打撃が最も大きかった産業は依然弱いまま」と指摘し、前回会合と同じく、産業により回復にばらつきがあることを強調している。各委員の予測をまとめた経済見通しでは、ワクチン普及や3月11日に成立した1兆9,000億ドル規模の経済対策成立(2021年3月16日記事参照)を背景に、2021年の実質GDP成長率を6.5%、失業率を4.5%として、前回見通し時(2020年12月)から大幅に上方修正されている(前回はそれぞれ4.2%、5.0%。添付資料表参照)。他方、2021年のインフレ率(コアCPE)を2.2%としており、金利引き上げの目安の1つであるインフレ率2%を長期的に超えるものの、ジェローム・パウエルFRB議長は記者会見において、「昨年3月と4月は(新型コロナウイルス感染拡大により)インフレ率が低かったため、今年1年は物価上昇率が高まる」「今年の一時的な物価上昇は政策金利見通しに影響を与えない」と述べている。

今回の会合では、地区連銀総裁らを含めた参加者18人による中長期の政策見通しも示されており、少なくとも2023年末までゼロ金利を維持するとする意見が大勢だった。しかし、2023年中に利上げを見込む参加者は7人と12月時点の5人から増えた。また2022年中の利上げを見込む参加者も4人となっており(前回は1人)、急速な景気回復で、FOMC内でも金利引き上げ時期の見方が分かれてきていることが鮮明となった。

こうした結果に対して、パウエルFRB議長は「委員の何人かに早期の利上げを見込む声があることは驚くべきことではない」として、意見の相違については問題ないとの考えを示した。また、経済再開によるインフレ率の一時的な上昇に関連して、市場で憶測が飛んでいる資産購入縮小(テーパリング)の議論に触れて、「経済情勢は引き続き不均一で完全回復には程遠い」「経済情勢の大きな進展があるまで資産購入は継続する」と述べた。さらに、「まだ資産購入縮小について話す時期ではない」「資産購入縮小の可能性はデータを基に可能な限り事前に通知する」とも述べて、市場の懸念の払拭(ふっしょく)に努めた。

(宮野慶太)

(米国)

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