ロシア通信大手、米AIチップ開発スタートアップへ出資

(ロシア)

サンクトペテルブルク発

2021年03月30日

ロシア通信大手が米国のスタートアップへの出資を通し、人工知能(AI)分野の強化を図る。携帯通信大手MTSは3月25日、AIチップ(注)開発を手掛けるネロンに約1,000万ドルを出資すると発表した。MTSは出資を通してネロンのロシアにおける総販売代理店となるほか、ネロンの技術を活用した独自のAIチップ開発にも取り組む。出資は、MTS100%子会社のMTS AIセンターを通して行う。

ネロンは、2015年に米国サンディエゴで創業したAI技術開発のスタートアップ企業。多分野に活用できる応用性の高いAIチップの開発が特徴。米国の半導体・通信大手クアルコムや中国IT大手アリババなどから出資を受けているほか、2021年1月には電子機器受託生産で世界最大手の台湾フォックスコンから資金を調達。世界の大手各社との関係を深めている。

MTSが取り扱うネロンのAIチップは、無人車両やドローン、映像監視システム、IoT(モノのインターネット)センサー、産業用ロボットといった多用途への応用が可能。MTSのアレクサンドル・ハーニンAI担当副社長は、ネロンや独自開発のAIチップをロシア企業に販売することで「AI技術を活用した端末開発の活性化を促す」と述べた。さらにMTSは、AI分野で海外企業との協業を一層進め、自社製品の海外販路開拓や海外企業のロシア市場参入支援に取り組む考えを表明した。

(注)AI処理に特化した半導体。自動運転や産業用ロボットなど、状況に応じた高度かつリアルタイムでの処理が求められる技術で重要となる基幹部品。

(一瀬友太)

(ロシア)

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