米USTR、航空機補助金をめぐる対英追加関税を4カ月間停止

(米国、英国、中国)

ニューヨーク発

2021年03月05日

米国通商代表部(USTR)は3月4日、EUによる航空大手エアバスへの補助金に対する報復措置について、英国への追加関税の適用を同日から4カ月間停止すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。英国は2021年1月1日から米国に対する報復関税の適用を停止しており、米国も停止することで交渉に注力する時間を確保し、早期の紛争解決を目指すとしている。

報復措置の停止対象となるのは、これまで15%の追加関税(2020年2月17日記事参照)の対象だった航空機・同部品のほか、25%が課されていたスコッチウイスキーや衣類(ウールスーツやカシミヤセーター)などが含まれる。英国際貿易省によると、対象製品全体の対米輸出額(2018年、追加関税賦課前)は5億5,000万ポンド(約825億円、1ポンド=約150円)に上り、そのうちスコッチ(およびアイリッシュ)ウイスキーは3億4,000万ポンドを占める。スコッチウイスキーを生産するディアジオのアイバン・メネゼス最高経営責任者(CEO)は「恒久的な解決により、数千人のスコットランドおよび英国の雇用を救う助けになる」と期待を寄せており、エアバスのクレイ・マコーネル広報担当も関税停止を歓迎した(ロイター電子版3月4日)。なお、停止措置は英国のみに適用され、他の欧州諸国は引き続き追加関税が賦課される。

今回の決定は、米英両政府の共同声明として出された。英国のボリス・ジョンソン首相は「(今回の合意は)英国の独立した貿易国家としての成果の証し」と述べ、今後の米英関係の強化に期待を示している。エリザベス・トラス英国際貿易相は「同盟国の米国が、新大統領と勤勉なUSTRスタッフの下、公平な解決を目指すわれわれの動きを受け入れたことは喜ばしい」と述べた。

また、両政府は声明の中で、中国などの非市場国経済が民間航空機産業に新規参入することで生じる課題への取り組みに本格的に着手する、と述べた。米国は2021年1月に中国国有の航空機大手の中国商用飛機(COMAC)を「共産主義中国の軍事企業」として、証券投資の禁止対象に認定している(2021年1月20日記事参照)。同社が生産するC919型機は2021年後半に、大型商用機として初めての中国内の認証を受ける見込みだ(「フィナンシャル・タイムズ」紙電子版3月4日)。

(藪恭兵)

(米国、英国、中国)

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