欧州委、ギリシャ第3次金融支援後の9回目の監査報告書を発表

(ギリシャ)

ミラノ発

2021年03月04日

欧州委員会は2月24日、第3次金融支援後(2018年7月11日記事参照)のギリシャの財政政策の進捗に関する9回目の監査報告書を公表した。それによると、同国の経済状況について、2020年の経済成長率は前年比でマイナス10%を見込むほか、新型コロナウイルスの影響により2021年も回復は限定的になるとしている。2020年はギリシャの主要産業である観光セクターが大きな打撃を負ったとしている。

新型コロナウイルスの影響に関して、労働者や企業に対してギリシャ政府が実施する支援措置のうち、雇用保護のための措置は効果的で、大幅な景気後退にもかかわらず、失業率はおおむね安定していると評価する一方、新規雇用が抑制されたままのため、失業中の人の数は増加していると指摘。その他、企業が直面する課題の全体像は他の欧州諸国と同様、緊急支援措置が段階的に廃止された後に顕在化することが予想されるため、慎重な影響管理が必要だと勧告している。

一方、財政再建に関しては、逆境にもかかわらず、教育、公的財産管理、公共セクターの民営化、エネルギー政策など多くの分野で進展が見られ、特に、債務返済の迅速化のカギとなる公共財政の管理改革は、行政手続きや処理能力などの改善を通じて、必要とされていた勢いを取り戻したと評価した。欧州委員会は、新型コロナウイルス感染拡大下で実際には多くの分野で改革のペースが減速したことを踏まえ、一部の重要な改革のタイムラインの後ろ倒しに合意しつつ、次回5月に発表される監査報告に向けて各種改革を加速するよう要請した。

なお、ギリシャは2021年から2026年にかけてEUの復興基金の中核である「復興レジリエンス・ファシリティー」により、計305億ユーロの補助金および融資を受けることになっており、同資金を有効に活用することで、経済発展と雇用創出につなげられるとしている。

しかし、感染拡大の状況やワクチン接種の進捗、地政学的緊張と継続的な難民問題などは、ギリシャ経済の復興における不確実性を増す要因となっており、将来的な経済動向の予測が困難になっているとも指摘している。

(井上友里、山崎杏奈)

(ギリシャ)

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