米カリフォルニア州の各自治体で食料品店従業員への危険手当条例化の動き

(米国)

サンフランシスコ発

2021年02月10日

米国西海岸の複数都市で、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて食料品スーパーの経営者に対し、従業員に危険手当を支払うことを義務付ける動きが出ている。

カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリアでは、オークランド市議会が2月2日、大型(注1)食料雑貨店が従業員に危険手当として5ドルを時給に上乗せして支払うことを定める条例案を可決した。手当の支払い対象となるのは、セーフウエーやターゲット、トレーダージョーズ、ホールフーズなどで働く約2,000人と見込まれる。オークランド市によると、新型コロナウイルス感染拡大の初期には、自主的に危険手当(通称「ヒーロー手当」)や1回限りのボーナスを従業員に支払う食料雑貨店もあったが、大半の雇用主は2020年夏の終わりごろには手当支給を終了した背景がある。

北カリフォルニアではオークランド市以外にも、バークレー市、サンノゼ市、サンタクララ郡、南カリフォルニアではロサンゼルス市、ロサンゼルス郡、ウエストハリウッド市など、カリフォルニア州の多くの自治体が同様の条例案を検討中だ(注2)。また、南カリフォルニアのロングビーチ市とモンテベロ市、ワシントン州シアトル市では同様の条例を既に施行している(注3)。

自治体による条例だけでなく、自発的に危険手当支給を続ける企業もある。食料雑貨チェーンのトレーダージョーズは、新型コロナウイルス感染が拡大し始めてすぐに、時給で働く全てのスタッフに危険手当として時間当たり2ドルを自主的に支給していたが、2月1日から対象スタッフにはさらに2ドル上乗せし、時間当たり計4ドルを手当として支払っていることを5日に発表した。

他方、危険手当の支給に反対するカリフォルニア食料雑貨店協会(CGA)は、特定の食料雑貨店だけを対象に義務化するのは違憲などとして、オークランド市やロングビーチ市、モンテベロ市を相手取って訴訟を起こしている。また、米大手食料雑貨チェーンのクローガーは危険手当支給を避けるため、ロングビーチ市内の系列店2店舗を4月に閉鎖する予定だと米メディア各社が報道した。

(注1)1万5,000平方フィート(約1,400平方メートル)を超える店舗面積を持ち、全米で500人以上の従業員を抱える食料雑貨チェーン。個人商店などの小規模店は含まない。

(注2)各自治体により提案する手当額、支給期間、対象企業の規模などは異なる。

(注3)手当額と支給期間はそれぞれ以下のとおり。

  • ロングビーチ市:4ドル/時間、施行から最低120日間
  • モンテベロ市:4ドル/時間、施行から180日間
  • ワシントン州シアトル市:4ドル/時間、新型コロナウイルス感染症非常事態宣言期間中

(田中三保子)

(米国)

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