欧州委、多国間体制におけるEUの主導権確保へ政策文書を発表

(EU)

ブリュッセル発

2021年02月18日

欧州委員会は2月17日、外務・安全保障政策上級代表と共同で、「ルールに基づく多国間主義へのEUの貢献の強化」と題する政策文書を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。この政策文書で、EUは今後も国連を中心とした多国間主義に基づく体制を強く支持するものの、多国間主義のあり方は世界情勢の変化に合わせて現代化する必要があるとし、こうした改革の中で、EUの利益を前面に出していくべきだと提言する。

政策文書では、現在の世界情勢は経済大国や地政学的な覇権に変化が起きている過渡期であり、世界秩序に関する異なる未来像が拮抗(きっこう)するなど、従来の多国間主義のあり方が試されているとした。EUは多国間主義に基づく体制を最も有効なガバナンスのあり方だと考えており、その強化に向けて、安全保障理事会を含む国連やWTOの改革を支持し、WHOに関してはより強力で独立した権限を求めている。また、IMFや世界銀行などの国際金融機関の透明性や効率性を高める取り組みを支持するとした。

また現在、グローバルガバナンスの対象にはほとんどなっていない、あるいいはガバナンスを強化すべき分野として、国際税制、人工知能(AI)などのデジタル技術、消費者保護、環境保護、天然資源の管理、原材料の確保などの安全保障にも関わる課題、環境技術や再生可能エネルギーなどを挙げ、国際基準の策定や協力体制の確立などが必要だとした。

国際社会におけるEUの存在感強化が課題

政策文書では、こうした改革や国際基準の策定においてEUの利益を守るには、EUと加盟国の間での政策調整を強化し、国際社会で各加盟国が同一の立場を主張するだけでなく、EU自体の存在感を高めることが今まで以上に重要だとする。そのためには、外交分野では、全会一致を基本とするEU理事会(閣僚理事会)でより迅速かつ効果的な意思決定のために、特定多数決による決定を増やすべきだとした。また、国際的な取り組みに関しては、EUと加盟国の供出金を用いて効果的に影響力を行使することや、国際機関に対しては職員派遣などの協力をあらゆるレベルで強化することも提言している。さらに、米国や英国などの志を同じくするパートナーとの関係強化も必要だとし、さまざまな機会を活用してこうした国との関係強化を求めた。

この政策文書は今後、EU理事会と欧州議会で審議される。

(吉沼啓介)

(EU)

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