「国家データ戦略」でデータ駆動型社会を推進、欧州のリード狙う

(ドイツ)

ベルリン発

2021年02月04日

ドイツ連邦政府は1月27日、同国がデータおよびデータ共有の革新的利用の分野において欧州で先駆的な役割を果たすことを目指す「国家データ戦略」を閣議決定した。

この戦略では、ドイツと欧州において経済や科学、市民社会、行政の各分野で革新的かつ責任あるデータの提供や利用を増加させることと、欧州の価値観に基づいた公正な参加の確保、データの独占防止、データの悪用への対抗を図ることに主眼を置いている。

また、同戦略では、具体的なアクションプランの分野を以下のとおり提示している。

  • データ提供のためのインフラの改善と安全なデータアクセスを実現:量子コンピュータや高性能コンピュータのプロジェクトや、欧州のクラウドデータ構想「ガイア-エックス(Project GAIA-X)」(2020年6月8日記事参照)をさらに推進する。
  • 責任あるデータ利用、イノベーションの可能性を引き出すデータ活用を促進:責任あるデータ利用やデータ悪用を防止する法的枠組みの整備。企業間のデータ共有と活用を拡大するため、データプールやデータ連携の開発を支援する。
  • データ活用能力の向上:一般市民、ビジネス分野、科学者のデータ活用能力を向上させる。全ての市民があらゆる場面で自律的にデータ活用が行えるようにするためのデジタル教育を推進。中小企業がデジタル駆動型経済への参画を促すための支援。
  • 連邦政府、州政府、地方自治体でのデータ活用や共有を改善する。デジタル化により市民が利用しやすい行政サービスへ改善する。

同戦略によると、データ利用を拡大させることで、インダストリー 4.0、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)などの分野の発展を促進することが可能であり、新たなビジネスモデルや価値の創出による成長が見込まれる。しかし、ドイツではいまだデータの有効活用が十分になされておらず、特に、中小企業によるデータ活用に対する投資水準は国際的に比較すると低水準にとどまる。利用者側のデータの価値に対する認識不足や、効果的なデータ利活用に関する知見の不足、データの共有を図ることに否定的なことなどの課題に同戦略では取り組むという。さらには、プラットフォーマーなど多くのデータを保有する企業による不当なデータの独占に対応、防止する制度を整え、公正な競争と開かれた市場を形成することが重要だとしている。

(ヴェンケ・リンダート、中村容子)

(ドイツ)

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