2021年度政府予算、新型コロナ対策の継続支援に110億Sドル
(シンガポール)
シンガポール発
2021年02月24日
シンガポールのヘン・スイキャット副首相兼財務相兼経済政策調整相は2月16日、2021年度(2021年4月~2022年3月)政府予算案で、新型コロナウイルスに関連した短期的な継続支援として、総額110億シンガポール・ドル(約8,800億円、Sドル、1Sドル=約80円)の新型コロナウイルス・回復力(レジリアンス)・パッケージを発表した
政府は2020年度に5回にわたる支援パッケージで、総額約1,000億Sドルの予算を新型コロナウイルスに伴う支援に充てた。2021年度政府予算案の110億Sドルのうち、(1)48億Sドルを公衆衛生の確保と感染対策、(2)50億Sドルを2020年度2月の予算で導入した国民(永住権者を含む)の雇用維持支援「雇用サポートスキーム」の一部延長を含む企業と労働者支援、(3)12億Sドルを航空、陸上輸送、芸術・文化など経済的な打撃の大きい分野に特化した支援に充てる。ヘン副首相は、2020年度予算が幅広い緊急支援だったのに対し、「2021年度の予算は(新型コロナ禍への)構造的な対応の加速が焦点となる」と説明した。
240億Sドルを向こう3年の中期構造変革に
同副首相はその上で「総額240億Sドルを向こう3年で企業や労働者が力強く再生するために充てる」と発表した。総額240億Sドルの中期支援として、チャンギ空港の航空ハブの地位回復や、企業間のイノベーションの協業を促進するためのプラットフォーム強化に充てる。このうち、52億Sドルを2020年度に導入した国民の新規採用を促進するために給与の一部を助成する「雇用促進インセンティブ(JGI)」の延長や、地場大手企業への政府投資会社テマセク・ホールディングスとの新たな共同投資スキームなどに投じる。
2020年度の政府の財政収支は649億Sドル(GDP比13.9%)の赤字と、1965年の独立以降最大の赤字幅となった。2021年度も引き続き財政支援の継続による拡張予算となり、政府の財政収支は110億Sドル(GDP比2.2%)の赤字となる見通しだ。政府は2020年度の新型コロナウイルスの経済支援の財源として、過去の準備金から総額520億Sドルを取り崩すと発表していた。同副首相によると、520億Sドルのうち、93億Sドルが2020年度で使われなかった。政府はさらに過去の準備金から17億Sドルを追加で取り崩し、合計110億Sドルを2021年度の新型コロナウイルス回復力パッケージの財源とする予定だ。
2021年度政府予算案の詳細は、財務省の予算案のページを参照。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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