中国製未承認ワクチン接種問題で2閣僚辞任、ビスカラ元大統領も捜査対象に

(ペルー)

リマ発

2021年02月18日

ペルーのフランシスコ・サガスティ大統領とビオレタ・ベルムデス首相は2月15日、元大統領らが新型コロナウイルスの中国シノファーム製の承認前ワクチンを内密に接種していた問題で、国民向けの釈明会見を行った。同社ワクチンのペルーでの第3相臨床試験時に、試験用とは別に2,000回分のワクチンが同社から提供され、それらが政府要人らに投与されていたという問題だ。

会見では、既に接種の事実が判明していたマルティン・ビスカラ元大統領と、前日の14日に接種を告白して辞任したエリザベス・アステーテ前外相のほかに、12日にビスカラ元大統領による接種の責任を取って辞任したピラール・マセッティ前保健相もワクチン接種していたことが明らかなった。臨床試験を行った国立カジェターノ・エレディア大学から提出された487人の未承認ワクチン接種者リストに、マセッティ前保健相が含まれていたという。大統領は特にマセッティ前保健相について、辞任の際には接種の事実が判明しておらず、辞任理由はあくまで元大統領による接種問題の引責というかたちだったため、「首相への忠誠に背いた」と非難。また、自身の内閣から2人の接種者が出たことについて「公職の責務に反する行為」として、深い失望と憤りを表明した。

一方、夫人や実兄とともに接種の事実が先週の段階で明らかにされていたビスカラ元大統領は、書面による声明で、接種は臨床試験の一環だったとして、越権行為には当たらないと主張している。

なお、シノファームから儀礼的に提供されたとみられる2,000回分の未承認ワクチンのほかにも、在ペルー中国大使館が同社に直接要請した1,200回分の存在も明らかになっている。ベルムデス首相は、これらのワクチンは同大使館関係者と在ペルー中国企業関係者によって利用されたとしている。

保健省(MINSA)の特別調査チームリーダーのフェルナンド・カルボネ氏は、ワクチンは原則2回接種となっているため、487人が接種した974回分以外の残り1,026回分(513人分)の行方についても引き続き捜査を進めるとしている。

保健相と外相の後任人事

政府は保健相と外相の後任人事をそれぞれ2月13日と15日に発表した。新保健相には、2008~2011年に保健相を務めた医師のオスカル・ウガルテ氏が任命され、13日に宣誓式を行った。新外相にはアラン・ガルシア政権下とアレハンドロ・トレド政権下で2度(1985年~1988年、2002~2003年)外相を経験しているアラン・ワグネル氏を任命している。

(設楽隆裕)

(ペルー)

ビジネス短信 18f397d699375738