スリランカ、英国からEU同等の特恵関税を享受

(スリランカ、英国)

コロンボ発

2021年01月08日

スリランカは、英国向け輸出において、2021年以降の3年間、EUと同等の優遇関税制度(GSP プラス)を享受できることとなった。英国は2020年11月に、スリランカを含む後発開発途上国は、ブレグジット(英国のEU離脱)後の2021年以降も引き続き、GSPプラスと同じ恩恵を受けられると発表した。英国の国際貿易省は、従前からのEUのGSPプラス対象国は、2021年1月1日から3年間(2021~2023年)、英国版のGSP制度の下、同じ特恵関税を取得できるとしている。この結果、EUのGSPプラスの受益国であるスリランカは、英国版の優遇措置をそのまま受けられることになった。

GSPプラスは、EUが開発途上国に提供している特恵関税制度の1つだ。途上国の中でも持続可能な開発や人権保障などに関連する一連の国際条約を批准・準拠している国に対して付与される措置で(注1)、一般特恵関税制度(GSP)より幅広い品目が免除対象となっている。スリランカはこれまで、アパレル製品や水産品の輸出で優遇措置を享受してきた。スリランカ中央銀行の2019年発表の統計によると、英国はスリランカにとってEU地域向け輸出の最主要国で、全体の輸出においても米国に次ぐ2番目に大きな輸出市場となっている。従って、スリランカ政府は、ブレグジット後の英国との貿易において、GSPプラスと同等の関税率を受けられるかを重要視していた。

スリランカは2019年に、1人当たり国民総所得(GNI)が4,000ドルを超えた。そのため、世界銀行はスリランカを同年7月に発表した国・地域別の所得分類上で(注2)、高中所得国に分類した。高中所得国になったスリランカは、2023年までにGSPプラスからの完全な卒業国になることが決まっていた。しかし2020年に入ると、新型コロナウイルスの影響で経済活動が大きく停滞し、2020年7月にスリランカは再び低中所得国に分類された。EUは、「新型コロナ禍」でスリランカの1人当たりGNIが一時的に落ち込んだと判断し、GSPプラスを2025年まで臨時延長する考えを示した。英国の2021年以降のスリランカに対する優遇関税策適用措置は、こうしたEUの方針を反映した措置となっている。

(注1)GSPプラスの適用国は、アルメニア、ボリビア、カボベルデ、キルギス、モンゴル、パキスタン、フィリピン、スリランカ。

(注2)世界銀行は2019年、高中位所得国の分類基準を、1人当たりGNI「3,996米ドル以上」から「3,896米ドル以上」に変更、スリランカは2019年に4,060米ドル(2018年同3,840ドル)のため、高中位所得国に分類されることとなった。

(ラクナー・ワーサラゲー、糸長真知)

(スリランカ、英国)

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