ブラジルで新型コロナワクチン接種開始、経済界の期待高まる

(ブラジル、中国、英国、インド)

サンパウロ発

2021年01月25日

ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)は1月17日、ブラジルが中国のシノバック・バイオテックと共同開発した「コロナバック」と、英国のオックスフォード大学がアストラゼネカと共同開発した「コビシールド」の2種類の新型コロナウイルスワクチンの緊急使用(合計800万回分)を承認した。そのうち600万回分はシノバック・バイオテックと提携しているサンパウロ州のブタンタン研究所から確保しており、残り200万回分はオックスフォード/アストラゼネカと提携するオズワルドクルス財団から確保した。

サンパウロ州政府はANVISAの承認後、連邦政府の接種計画に先立つかたちで、ブラジル初の新型コロナワクチン接種(シノバック・バイオテック)を開始した。同州政府が公式サイトで更新している同ワクチンの接種状態示す「ワクチンメーター」によると、22日までに10万人超が接種したことが分かる。なお、サンパウロ州は25日から2月7日の間、同州の経済活動再開計画を引き締めることを決定し、土日祝日の終日と平日午後8時~翌日午前6時に限って、州内全てをフェーズ1(最大警戒)にすることを発表した。

連邦政府が当初から確保を試みていたオックスフォード/アストラゼネカのワクチンは、生産元のインドからの入手が一時危ぶまれたものの、22日にブラジルへ到着した。インドのナレンドラ・ダモダルダス・モディ首相は同日の公式ツイッタ―で、インドに謝意を示していたジャイール・ボルソナーロ大統領に対し、「新型コロナ対策でブラジルの信頼に足るパートナーになれたことは光栄だ」と発信した。

新型コロナワクチン接種には、産業界からも注目が集まる。全国工業連盟(CNI)のホブソン・アンドラーデ会長は15日付の公式サイトで「新型コロナワクチンの接種は経済活動を本格化させるために必要不可欠だ。多くの人が接種することにより、経済活動の不確実性を解消できる」と述べた。同連盟が年明けの1月4~8日に実施した経営者信頼感指数(ICEI、注)の調査結果では、感染者数の増加に伴う社会的隔離措置の強化や年明けからの緊急給付金の停止などを理由に、前月比2.2ポイント減(12月:63.1→1月:60.9)と下降気味になっていた。その後、連邦政府と州ともにワクチン確保・接種に向けた動きが活発化しており、経済活動を新型コロナウイルス拡大前の水準に戻していくための重要な展開となっている。

(注)企業経営者の景況感を測る指標。数値が大きいほどビジネスに対してポジティブな見方となる。2020年1月の経営者信頼感指数(ICEI)は65.3ポイント。2021年1月は60.9ポイントであるため、前年同月比で4.4ポイント減となる。

(古木勇生)

(ブラジル、中国、英国、インド)

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