議会が農業振興規則法の代替法案を可決、経済界からは反対声明が続出

(ペルー)

リマ発

2021年01月05日

ペルー議会は、2020年12月29日に農業振興規則法(法律27360号)の代替法案を賛成多数で可決した。農業振興規則法は、農業の振興と農業従事者の権利を保障することを目的として2000年に公布されたが、2020年11月末からの同法に対する各地での抗議デモを受け、同法の廃止を規定する法律第31087号が12月4日に議会で承認されていた。今回可決された新たな法律では、主に以下の内容が盛り込まれている。

  1. 1日当たりの平均4時間以上の労働の場合の最低日給を前法律が定めた39.19ソル(約1,097円、1ソル=約28円)から48.5ソルへの引き上げ
  2. 前法律では定められていなかった農業特別ボーナス(BETA)を新たに策定〔法定最低賃金(RMV)の30%(279ソル)〕
  3. 労働者への利益分配制度の割合を5%から段階的に増加(2023年まで5%、2026年まで7.5%、2027年以降は10%)
  4. 被雇用者向け保険(EssSalud)の雇用主負担を改定(労働者数100人以上または売上高が1,700UIT〔注〕以上とそれ未満で分別)
  5. 法人税の段階的な引き上げ(売上高1,700UIT以下の企業:2030年まで15%、2031年以降は29.5%。同1700UIT超の企業:2022年まで15%、2024年まで20%、2027年まで25%、2028年以降は29.5%)

ペルーでは、2020年11月30日に南部イカ州で発生した、一部の非正規農業労働者による国道封鎖などの抗議デモを発端に、農業振興規則法の廃止と待遇改善を求めて暴徒化した抗議デモが各地の農業地域で発生していた。北部ラ・リベルタッド州などでは、同州から選出された主力左派のフレンテ・アンプリオ(解放戦線:FA)党の議員がデモ参加者と共に法改正を支持する動きをするなど、2022年の地方総選挙を見据えた議会議員らによる人気取りとも受け取れる動きもみられ、法律廃止自体が大衆迎合的な政策だとの批判を受けている。

ペルー農業生産者団体連合会(AGAP)のアレハンドロ・フエンテス会長は、新法は主に約2,000社に上る中小農家にマイナスの影響を及ぼす、との声明を発表。また、ペルー経団連(CONFIEP)、ペルー輸出業者協会(ADEX)、ペルー工業協会(SNI)をはじめとするペルー経済界の主要団体や各地の商工会議所は、農業振興規則法の廃止や新法採択への反対と政治不安に対する懸念を連名で発表している。

〔注〕ペルーの税額や罰金額などの表示の際に用いられる課税単位。年ごとに対ソルレートが変わる。2021年は1UIT=4,400ソル。

(設楽隆裕)

(ペルー)

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