国家イノベーションセンターが着工、イノベーション創出の中核機関に

(ベトナム)

ハノイ発

2021年01月20日

ベトナム計画投資省(MPI)は1月9日、ハノイ郊外のホアラック・ハイテクパークにおいて、国家イノベーションセンター(NIC)(注1)の着工式典を開催した。式典にはグエン・スアン・フック首相、ブー・ドク・ダム副首相のほか、計画投資相、情報通信相、科学技術相らが参加した。ジェトロやKOTRA(大韓貿易振興公社)などの国際政府機関も列席した。フック首相は、ベトナムが2020年のグローバル・イノベーション・インデックス(注2)で131カ国中42位に位置し、順位を上げていると指摘。一方、科学技術分野における投資額がGDP比0.44%にとどまる点や、イノベーションエコシステムが分散している点を課題に挙げ、国家レベルとして初めてのイノベーション拠点となるNICに高い期待を寄せた。

NICを所管するグエン・チー・ズン計画投資相は、同センターをベトナムにおけるイノベーション創出の中核機関として位置付け、2021年が新たな発展に向けた節目の年となると強調。また、同省が2018年に創設した「ベトナムイノベーションネットワーク」(注3)の枠組みを活用し、諸外国との連携を強化していくと述べた。

NICはホアラック・ハイテクパーク内の約9.67ヘクタールの敷地に、オフィススペースやスタートアップ向けのコワーキングスペース、研究施設、イベントスペース、宿泊施設などを備えた複合施設となる。スマートシティ、スマートファクトリー、サイバーセキュリティ、DX(デジタルトランスフォーメーション)、農業・環境の5つの領域を重点分野としており、入居企業は各種優遇が受けられる。今回、同センターの完成時期については発表されなかったが、NICの担当者によると、2年後の工事完了を見込んでいるとのことだ。

「ベトナム国際イノベーションエキスポ」を初開催

同会場では1月9~10日に、「ベトナム国際イノベーションエキスポ」が初めて開催され、約1万2,000人が来場した。国内外のIT企業やスタートアップ156社が出展し、中には日系企業の参加も見られた。会期中は「イノベーションの原動力としての若者の役割」などのテーマでセミナーも行われた。ベトナム政府は1月10日を「国家イノベーションの日」とし、同イベントを毎年開催していく計画だ。

写真 NIC着工式典(ジェトロ撮影)

NIC着工式典(ジェトロ撮影)

写真 ベトナム国際イノベーションエキスポ(ジェトロ撮影)

ベトナム国際イノベーションエキスポ(ジェトロ撮影)

(注1)国家イノベーションセンター(Vietnam National Innovation Center:NIC)は、2019年10月2日付の首相決定1269/QD-TTgで計画投資省傘下に設立が決定されるとともに、2020年8月21日付の政令94/2020/ND-CPでは同センターを利用する企業や個人向けの優遇制度が規定された。2020年10月には、菅義偉首相の来越に合わせ、ジェトロとNICがイノベーション分野における日越企業関係の強化で協力覚書を締結した。

(注2)グローバル・イノベーション・インデックス(GII)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、世界知的所有権機関(WIPO)が世界131カ国のイノベーション能力を分析しているランキングで、2014年に71位だったベトナムは、2019年から2年連続で42位にランク入りしている。

(注3)ベトナムイノベーションネットワークは、科学者や専門家など、約1,000人の在外ベトナム人から構成される組織で、NICが所管。現在、日本、米国、ドイツ、オーストラリアの4カ国に拠点を設置している。日本では、「Vietnam Japan Open Innovation Network(VJOIN)」として2020年から活動を開始した。

(ファム・ズン)

(ベトナム)

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