2021年1月適用の最低賃金を15%引き上げ、業界団体は警鐘鳴らす

(メキシコ)

メキシコ発

2020年12月21日

メキシコの国家最低賃金委員会(CONASAMI)は12月16日、2021年の最低賃金(日額)を全国一律で15%引き上げる決議を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。12月中に官報公示し、2021年1月1日から適用する見込みだ。メキシコの最低賃金は、一般最低賃金と北部国境地帯最低賃金に大別される。また、最低賃金額の上昇率は、通常ベースアップ(Monto Independiente de Recuperación:MIR)分とインフレ考慮分で構成される(注)。

CONASAMIによると、一般最低賃金は現状の123.22ペソ(約641円、1ペソ=約5.2円)から141.70ペソとなる(10.46ペソのMIRと、6%のインフレ考慮分の合計)。北部国境地帯最低賃金は、現状の185.56ペソから213.39ペソとなる(15.75ペソのMIRと、6%のインフレ考慮分の合計)(添付資料表参照)。今回は新しく「家事手伝い業(Trabajadores de hogar)」と「季節農業従事者(Jornaleros agrícolas)」という2つのカテゴリーが追加され、それぞれの最低賃金は2020年のそれから、25%と30%アップの154.03ペソと160.19ペソとした。

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は、メキシコ経済の落ち込みによって失業者が急増している状況を民間企業への負担増でカバーする意図を示している。しかし、業界団体は同政策に警鐘を鳴らしている。企業家調整協議会(CCE)のカルロス・サラサル・ロメリン会長は「失業者をこれ以上増やさないために民間企業も協力する姿勢だが、15%という上昇率は大き過ぎる。中小企業には大きな負担増となり、かえって、倒産件数の増加につながる懸念の方が大きい」と述べた(「エル・エコノミスタ」紙12月17日)。メキシコ経営者連合会(COPARMEX)のグスタボ・デ・オジョ会長も「政府から民間企業への支援がほとんど存在しない状態で、企業側にだけさらなる負担を強いることは不条理だ」とコメントした(「エル・フィナンシエロ」紙12月17日)

(注)最低賃金の上昇率は、最低賃金で正規雇用されている場合に限定され、それ以上の金額で雇用さている場合は、企業業績やインフレ率などを勘案して労使間の交渉で決定される。

(志賀大祐)

(メキシコ)

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