タイ産業界の業況判断は7カ月連続改善も、クラスター発生の影響懸念

(タイ)

バンコク発

2020年12月23日

タイ工業連盟(FTI)は12月17日、2020年11月のタイ業況判断指数(TISI、注)を発表した。同発表によると、11月の業況判断指数(回答企業数:1,258社)は前月比1.4ポイント増の87.4ポイントと、7カ月連続で改善した。新型コロナウイルスの影響が顕在化する直前の3月の水準(88.0ポイント)にほぼ並ぶまで回復した(添付資料図参照)。

同発表によると、プラス要因としては、国内・海外市場での受注増に伴う生産量の増加、政府の経済刺激策やインフラ投資、新年を見据えた食品や医療製品の国際需要の増加、年末年始時期に消費される消費財の生産量の加速などが挙げられている。

他方、マイナス要因としては、世界経済が立ち直っていないことに加え、通貨バーツ高による輸出企業への影響、輸送用コンテナ不足による物流費の増加などが挙げられている。コンテナ不足は、タイに限らず、アジア全体での経営上の課題になっている(2020年12月15日記事参照)。

今後3カ月先の業況感を聞いたTISI見通しも、前月比2.2ポイント増の94.1ポイントに上昇した。しかし、発表後の12月20日にバンコク都に近いサムットサコーン県で新型コロナウイルスの大規模なクラスターが発生し(2020年12月21日記事参照)、バンコク都においても在宅勤務の要請が出ていることから、在タイ企業の景況感は今後、悪化する懸念もある。

FTIのスパン会長は12月21日、サムットサコーン県でとられているロックダウン措置による経済的損失は1日当たり10億バーツ(約35億円、1バーツ=約3.5円)という推計を発表。同県には、水産加工やアパレル、自動車部品、ゴム製品などの産業があり、6,082工場で23万3,000人の外国人労働者と12万2,000人の地場労働者が雇用されているという(「バンコク・ポスト」紙12月21日)。

(注)TISI(Thai Industries Sentiment Index)は、FTIが加盟企業(製造業を中心とする45産業)に毎月行っている景況感に関するアンケート調査に基づく指数。当該月の現況と、3カ月先の見通しをそれぞれ聞いており、100を超えると「業況が良い」、100を下回ると「業況が悪い」を示す。

(北見創)

(タイ)

ビジネス短信 d4ccc4fc4e7e1282