メキシコのロモ・ガルサ大統領府長官が辞任

(メキシコ)

メキシコ発

2020年12月07日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は12月2日、自身のツイッターでアルフォンソ・ロモ・ガルサ大統領府長官の辞任を発表した。政権発足時から2年間、大統領府長官を務めてもらうことで合意しており、その2年間を務め上げたと大統領は説明している。また、同長官が、民間部門と大統領をつなぐパイプ役を果たしてきたが、公職を退いた後もその役割を続けるとも記している。

ロモ・ガルサ長官は同日夜、テレビ局ミレニオのインタビューに答え、2年間の約束で大統領府長官に就任したことを肯定するとともに、辞任後も民間部門とのパイプ役を務めていく意向を表明した。また、メキシコの企業家が、自らの辞任に不安を抱く必要がないことを強調した。

一方、12月3日の早朝記者会見において、ロペス・オブラドール大統領は、これまでのロモ・ガルサ長官の官職は大統領府内からなくなり、同長官を支えてきたチームの解散も明言した。

大統領によるロモ・ガルサ長官辞任の発表を受けて、企業家調整評議会(CCE)、メキシコ工業会議所連合会(CONCAMIN)、全国農業連合(CNA)など主要ビジネス団体が、政府と民間部門の仲介役、民間部門の政府に対する要望などの聴取役としての同長官の貢献をたたえるとともに、同長官への謝意を表明した。メキシコ経営者連合会(COPARMEX)のグスターボ・デ・オジョス・ワルテル会長は、自身のツイッターで同長官の貢献を高く評価するとともに、さまざまな出来事にブレーキをかけ、かつ、急進主義者の動きを抑制したと記している。

ロモ・ガルサ氏は、ロペス・オブラドール大統領が自らの政党「国家再建運動(MORENA)」を率い、2018年大統領選挙に臨み始めた時に、最初に協力姿勢を示した財界人の1人だった。優れたビジネスパーソンであるロモ・ガルサ氏に対するビジネス界の期待は大きく、2019年2月には政権とビジネス界をつなぐ「全国投資振興・雇用・経済成長審議会」が立ち上げられた。しかし、民間部門の主張が政権によって受け入れられることはほとんどかった。そして、2020年に入ってから講じられたエネルギー政策により、民間企業が政府部門と締結していた契約が履行されない事態が発生したことから、ロモ・ガルサ長官がエネルギー政策を批判することもあった。左派的傾向が懸念された現政権の発足時、ロモ・ガルサ長官が政府と民間部門の良好な関係を維持することが期待されていたが、2年を経て、そのアンカー役を失うこととなった。

(稲葉公彦)

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