ワクチンの輸送で低温輸送の需要増す

(米国)

ロサンゼルス発

2020年12月23日

米国製薬大手のファイザーがドイツ製薬ベンチャーのビオンテックと共同開発し、米国で初めて承認された新型コロナウイルスワクチンの全米向けの出荷が12月13日から始まった。ファイザー製のワクチンは摂氏マイナス70度程度の超低温で保管する必要があり、温度管理が大きな課題になっている。そのため、医薬品や生鮮食品での低温輸送の実績がある米国運輸大手のユーピーエス(UPS)やフェデックス(FedEx)が輸送する。米国政府は、2021年3月までに最低でも1億人分のワクチンが出荷されると発表している。

ファイザー製のワクチンは、ドライアイスが詰められた小型の冷凍保管庫に保管されて輸送される。これを実現するため、ユーピーエスは、1時間に約544キログラム(約1,200ポンド)のドライアイスを倉庫で生産する体制を整えた。フェデックスは、新開発の省力で温度管理可能なブルートゥース搭載軽量センサーを容器に取り付けて、輸送状態の情報を随時確認する体制を構築している。また、ユーピーエスとフェデックスはそれぞれ、大型の保冷施設を設け、陸上輸送から航空輸送へ移し替える際に超低温を保てる体制を整えている。しかし、国際航空運送協会(IATA)は、出荷されるワクチンの25%は適切な温度管理がされない可能性を示唆している。

また、米国連邦航空局(FAA)は、危険物として扱われるドライアイスの一定量を超える利用に当たり、航空会社向け安全警告(SAFO)20017PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。

ワクチン供給で航空輸送のニーズが加速

ワクチンの全米向けの輸送が急がれる中、旅客・貨物輸送を担う航空会社が次々にワクチン輸送を開始している。アメリカン航空がシカゴからマイアミへ初のワクチン輸送を行ったほか、ユナイテッドカーゴもドイツのドカシュ(DoKaSch)製の保冷コンテナをレンタルして、ベルギーからシカゴにワクチン輸送を行った。デルタカーゴも同様にワクチンの輸送を開始している。IATAの発表によると、2022年には医薬品の売上高は1兆4,300億ドルに達する見込みで、そのうち低温輸送の医薬品が占める売上高は4,160億ドルに達するという。

(サチエ・ヴァメーレン)

(米国)

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