議会で「富裕税」の法案可決

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年12月11日

アルゼンチン議会上院は12月4日、与党が提案した「新型コロナウイルスの世界的流行の影響を緩和するための連帯的および特別貢献」と名付けた法案を賛成42票、反対26票で可決した。野党側が強く反発し、メディアが「富裕税」として報じたこの法案は公布後に施行される見通しだ。なお「富裕税」の対象は個人で、法人は対象外。

「富裕税」の主な内容は次のとおり。

○課税の対象:同法施行日に有する2億ペソ(約2億5,400万円、1ペソ=約1.27円)以上の資産。

○納税義務者については以下のとおり。

(a)アルゼンチン国内の居住者

(b)課税率が低いまたは無課税の税制を有する国(例えば、パラグアイやボリビア)に居住するアルゼンチン国籍の個人

(c)国外に居住し、国内に資産を有する個人。

※2019年12月31日に(a)~(c)に該当する者が対象のため、同日以降に住居地を変更していても対象となる。

○税率は以下のとおり。

  • 国内に有する資産に対し2%~3.5%
  • 国外に有する資産の場合、3%~5.25%(法案では、国外に保有する資産の30%を国内に送還した場合、国内の資産と同等の税率を課すとしている)

同法案に賛成した与党上院議員は「緊急事態における1度限りの貢献的なものであり、約1万2,000人(アルゼンチン全人口のわずか0.02%)が対象で、徴税額は4,200億ペソになる」と主張した。また、税の使い道については、新型コロナウイルス感染対策に20%、中小企業への補助に20%、人材育成プログラム(Progresar)に20%、貧民対策に15%、天然ガス生産関連政策に25%が割り当てられる予定としている(12月4日付現地紙「インフォバエ」と6日付現地紙「ラナシオン」)。

一方で、個人資産税が既に存在するため、二重に課税されることになり、アルゼンチンの税制に反するとの声も上がっている(12月5日付「ラナシオン」)。

写真 アルゼンチンの国会議事堂(ジェトロ撮影)

アルゼンチンの国会議事堂(ジェトロ撮影)

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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