新型コロナの影響で全世界の景況感は過去最悪水準に、ジェトロが日系9,000社調査

(世界)

海外調査部

2020年12月04日

ジェトロが8月から9月にかけて実施した世界全域の日系企業約9,000社に対する調査によると、2020年に営業利益で黒字を見込む企業の割合は新型コロナウイルスの影響を受け、前年から17ポイント低下の48%にとどまることがわかった。この水準はリーマン・ショック直後の2009年をも下回り、赤字の割合も過去最高を更新した。12月4日発表の「ジェトロ 2020年度海外進出日系企業実態調査-全世界編-」で明らかになった(添付資料図参照)。

営業利益が前年比で悪化する企業は約6割。特に輸送機器・同部品やホテル/旅行、飲食、人材紹介などの業種で悪化が深刻。景況感を示すDI値(注)は全ての対象地域で過去最低値を更新した。

日系企業の4割近くは今後1~2年で事業を「拡大」する計画ながら、「新型コロナ禍」の影響により、同割合は前年比で10ポイント以上低下。ほとんどの地域で「拡大」意欲が過去最低となった。

新たなビジネスモデルを構築へ

ビジネス正常化の時期は2021年前半、または同年後半の見込みがいずれも3割強で、2021年までには8割近くの日系企業がビジネス活動の正常化を見込んでいる。現状は中国をはじめとした北東アジアの回復が先行している。

新型コロナウイルスの影響を受けて、各国は事業戦略とビジネスモデルをデジタル化にシフトした。在宅勤務やテレワークの活用拡大に加え、バーチャル展示会などの活用や、人工知能(AI)利用の推進などに意欲的に取り組む姿勢が顕著だった。また、リスク分散と耐性強化を織り込んだ経営、ビジネスモデルを指向する様子もうかがえた。キーワードは、「非対面・非接触」へのシフトや、販売や調達の「多元化・多角化」、バリューチェーン全体の「可視化」の推進といった点がコロナ後の日系企業の大きな姿になりそうだ。

本調査は北米や欧州、アジア・大洋州などの主要地域別に、原則として毎年1回実施している。2020年度は、原則全ての地域で調査期間を統一したことに加え、営業利益見通しや今後の事業展開の方針などの主要テーマに関して、アンケートの設問を全地域で共通化した。

(注)Diffusion Indexの略で、営業利益が「改善」する企業の割合から「悪化」する割合を差し引いた数値

(伊藤博敏、新田浩之、甲斐野裕之)

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