米サンフランシスコ・ベイエリアから本社移転するテック大手、相次ぐ

(米国)

サンフランシスコ発

2020年12月21日

米国カリフォルニア州に本社を構えるテック企業の多くで、テック産業集積地「シリコンバレー」を含むサンフランシスコ・ベイエリアから本社を他州へ移転する動きが相次いでいる。

一連の本社移転企業のうち直近では、1970年代からシリコンバレーに根を張ってきたオラクルが12月11日、本社をレッドウッドシティからテキサス州オースティン(注1)へ移転することを発表した、と複数の現地メディアが報じた。同社は、従業員が働くオフィスを自身で選べるようにし(在宅勤務を含む)、より柔軟な働き方を促進することで、従業員の生活における満足度(QOL)と仕事の成果の質向上を目指すとしている。レッドウッドシティのオフィスは閉鎖せず、今後も同社の拠点として継続していく。

12月1日にはオラクルに先行して、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(以下、HPE)と、サイバーセキュリティー分野のユニコーン企業(注2)であるタニウムがそれぞれ他州への本社移転を発表した。

HPE(現本社:サンノゼ)は正式な移転は2021年春としているが、2020年初めからオフィス拡張工事を行っていたテキサス州ヒューストン都市圏へ本社を移す。本社移転に際し、サンノゼオフィスのほとんどの幹部と非技術職従業員の異動はあくまで希望者のみとし、レイオフ予定していない。また、サンノゼオフィスは今後も研究開発のハブとして継続する。

タニウムはエメリービルからワシントン州カークランドへ本社を移転する。2021年半ばをめどに新本社のオープンを予定している。現時点では、新型コロナウイルス感染拡大に伴って同社の従業員は在宅勤務を続けている。現地報道によると、同社は本社を移転しても、エメリービルの旧本社オフィスの規模を縮小しない方針だ。

これら3社以外にも、12月以前から大手テック企業やテック産業以外でも州外への本社転出が相次いでおり、現地のビジネス支援団体ベイエリア協議会は他州への主要企業流出に懸念を示す。協議会は「カリフォルニア州と地方自治体の税金の高さや規制、新型コロナウイルス感染拡大に伴うビジネスへの制限、住宅費の高騰などから、企業はより良い環境を探し始めている」と述べている。

(注1)オースティンは、コンピュータやその周辺機器、ソフトウエア関連分野の発展が目覚ましく、ハイテク産業の新拠点として注目されている(2019年5月29日記事参照)。

(注2)評価額10億ドル以上のスタートアップ。

(田中三保子)

(米国)

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